2009年4月29日水曜日

追悼



 マリオの死は家族にとって象徴的だった。


 八年振りに戻った家の庭は荒れ放題である 家を建てると同時に植えた桜が根元から枯れていた。


 庭のシンボルのような木だった。 普源桜という樹種で、満開になると大粒の八重の花がはち切られんばかりに咲いた。


 初春を彩る吉野桜と違い、一ケ月以上も精一杯咲き続ける。


 前年の秋までは辛うじて小さな芽を残していたが、引っ越し後に確かめたらマリオの死と呼応したかのように樹全体が枯れていた。


 マリオが死んで一ケ月後に八幡神社にお参りに行った。自宅のリフォーム報告と各地にいる子供達を含めて新生活の祈願である。


 境内で恒例の植木市が開かれていた。


 参詣の後、夫婦でぶらぶらと見て回った。


 枯れた桜と同じ木の苗を見つけた。小さな木であったが、淡いピンクの大粒の花を十数個つけていた。


 樹高の割に高価であったが、ためらわずに買った。


 木登りの好きだったマリオがよく登った普源桜である。


 ネムの木も買った。桜はマリオが幼くて元気だった頃の思い出だ。 ネムの木は妻が求めたが、追悼の意味があるのかもしれない。


             マリオの好きだった普源桜


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