2009年4月9日木曜日

老境

ー就職活動ー


 景気が悪く、大学生の就職は超氷河期と言われている。そんな時期に大学四年になった次男は運が悪かった。


 目指した会社の面接までいったが、合格しなかった。


 次男は諦めが早い。


 パパさんも心配して色々アドバイスするがこれという妙案はない。


 土木系統だったのも災いした。


 バブル崩壊で土木系技術者の最大の受け入れ企業である建設業界は元気がない。



 当然関連の業界も不振である。


 パパさんは「大学院にでも緊急避難するか」とアドバイスした。


 次男は「えー、まだ勉強するのー?」


 次男は大学の教授に話しをして大学院にいくことにしたが、(大学院は勉強したい奴が行く所なのになー)と割切れない思いだった。


 マリオも一緒に複雑な思いをしていた。



              オニイチャン!大丈夫か?


2009年4月8日水曜日

老境



ー一念発起ー

 火曜日になると、ママさんが朝からいそいそとしている。パパさんがJRを退職してから習いものをしている。着物教室である。


 一念発起の50の手習いであるが、ママさんは真剣だ。


 1年経って講師の免状と看板をもらった。

 取りあえず人に教える資格らしい。


 ママさんはそれでは満足せずにその上にチャレンジした。


 パパさんも応援して、師範の免状とインターナショナル・ライセンスを獲得した。


 マリオもたいしたもんだと思った。


 ママさんの動機は長男の結婚式の時、ホテルの美容室に親族全員の着付けを頼んだことらしい。


 娘が結婚する時は、自分が着せてやりたいという意欲が、ママさんを一念発起させた。


 お免状を頂いてしばらくたってから、家にママさんの友達三人が集まるようになった。


 ママさんが先生のきもの教室の始まりである。


 毎週木曜日の午後、マリオの行動が制約される。


 着物に毛がつくため、娘の部屋に閉じ込められる。


 お稽古の時間は2時間であるが、その後がいけない。


 おばさん達の大座談会が始まる。延々と夕方6時ぐらいまで続く。


 マリオの我慢の限界にきたあたりで、ようやく教室のお開きとなる。


待ちくたびれたヨ 「マリちゃん、ごめんね」のママさんの一言でほっとする。


2009年4月5日日曜日

老年期




ー腎臓病ー

 マンションに引っ越した最初の夏になって、しょっちゅうマリオは水を飲む。おしっこも頻繁になった。喉が乾くというより調子が悪い。

 ママさんが異常に気がついて「マリちゃんどうしたの」と話しかけた。

 マリオもなぜ水を飲みたくなるのかよく判らない。ママさんは娘に相談した。

 「ちょっと、マリオがおかしいわよ」

 「次の土曜日に病院に連れて行こうかな」

 マリオも当年とって十一才である。人間に例えると老年期の入り口にある。飼い猫は人間と同じ生活をしていると、人間と同じような生活習慣病にかかるケースが多い。

 それに猫にとっては生活環境の変化が一番健康によくない。

 盛岡の家が快適だっただけに、仙台でのJRの社宅暮らしから現在のマンション生活と、猫族のマリオにとっては環境変化と生活悪化が激しすぎる。

 土曜日に娘の運転でママさんと獣医院に行った。

 獣医はママさんの説明を聞いて糖尿病か腎臓かどちらかと考えていた。検査の結果、案の定、腎臓の機能がやや低下していた。

 獣医は命にかかわるほどではないが、注意するに越したことはないと猫の腎臓病に良い食餌療法を勧めた。
ママさんは獣医院から、食餌療法用の缶詰をどっさり買った。

 家に帰ると、娘が缶詰を開けて「ウワー、まずそう」と言いながら「はい、マリちゃんお食べ」とマリオの前に置いた。



 マリオは匂いを嗅いだが、ベチャベチャした感じと薬っぽい匂いがしたため口をつけなかった。娘は食べさせるにはどうしたら良いか、作戦を考えた。



 まずい食事を改善するには、大好物の鰹節を掛けるのがマリオには効果がある。



病院の缶詰の餌にたっぷり鰹節をかけた。マリオは大好物の鰹節だけをきれいに食べて、餌には口をつけなかった。



 そんなことを繰り返しているうちに、少しずつであるが体重が減ってきた。



 一ケ月程過ぎて、獣医院に行くと体重が四キロ弱である。往時には六キロあった。獣医は「げきやせですね」と言った。



 獣医院から戻って、ママさんと娘は方針転換した。食事療法を諦めて、マリオが好きな市販の猫用高級食に戻した。


     飛んでゆく鳥を見るしかやることがないんだよ!