ー隣の姉妹ー
今まで空き家だった隣の社宅に引っ越ししてきた。パパさんが国鉄本社に勤めていた時の知り合いらしい。
夜になって隣人夫妻が恒例の引っ越し挨拶にきた。パパさんとママさんは「よろしくお願いします」と挨拶している。帰ってから、ママさんが「子供が小さいのね」と言っている。
パパさんは「まだ、若いからな」と答えた。
二三日経って、玄関で遊んでいる女の子にママさんが話しかけた。
「お名前は何て言うの」
「○○」
「アレ、うちのお姉ちゃん(娘)と同じだね」
「一人で寂しいね、おばちゃんのおうちにおいで」と言って三才の女の子を家に連れてきた。
「あっ、おばちゃんのところに猫ちゃんがいるの」
「お名前はなんていうの?」
マリオは大の苦手の子供なので、早々に次男の部屋に逃げ込んだ。
女の子は「横浜のおじいちゃんのうちに猫ちゃんがいるの」と言った。
ママさんは「あーそー、じゃー、猫ちゃんが好きなのね」と聞いた。女の子は「ウン」と言った。
それから女の子は「マリオのおばちゃんのところに行ってくる」と言って、毎日のように遊びにきた。
時々、ママさんは〇才の妹も預かった。
マリオも最初のうちは警戒していたが、来る回数が頻繁で行動が制限されるのも窮屈なため、恐る恐る近寄って見た。
それにママさんが居るのでやや安心感もある。女の子は「マリちゃん」と声をかけるがいじめる気配はなかった。
ママさんが預かった〇才の子は、まだ自由に行動出来ないので居間のソファーに寝せられている。マリオが近寄らない限り問題は起こらないが、マリオは遠くから眺めるだけで、大嫌いな赤ちゃんに近寄る気はサラサラない。
猫に慣れているためか、マリオには優しい姉妹だった。
マリオが子供に気を許したのは、長男の孫ちゃんとこの姉妹だけかもしれない。
後日、会社の運動会で姉妹のママさんが競技に出場するため、パパさんに妹の方の赤ちゃんを預けた。
久し振りで赤ちゃんを抱いたパパさんは、大事そうに抱いて競技を見ていた。通り掛かった若い社員が「孫ちゃんですか」と言った。
「ばか言え、娘だよ」と言いながらパパさんは満更でもない表情をしていた。
2008年11月16日日曜日
青年時代
娘の自動車運転熱は大変なものだ。ほとんど毎日、山の上の学校通学に利用しているためもあって運転技術も相当なレベルになっている。
休みになると、家にじっとしていられない。特に連休になると遠出をしたくなるらしい。
「今度の休みに(盛岡の)お祖母ちゃんの家に行かない」とくる。
マリオはぞっとする。とにかく車に弱い。
話がまとまって出かけることになる。娘は「マリちゃんも連れて行くからネー」とくる。
盛岡までは距離が二〇〇キロで、高速道路で約二時間かかる。
二時間も家族五人と狭い車の中で過ごすのも大変であるが、おまけにマリオは車酔いをする。車に乗るとペット用のバスケットから出されて自由になるが、動く空間がほとんどない。
それでも家族の膝の上や足の下をくぐって快適な場所を探すが、どこにも見当たらない。狭いところは嫌いではないが、行動を制約されるのが嫌である。高速道路のため、大好きな外の景色も車が一瞬に通り過ぎるだけで面白くない。
その上、娘はハンドルを握ると人が変わる。まず第一に口が悪くなる。
ママさんに「あなたは、女の子なんだからネー」と注意されても聞き入れない。それにスピードをどんどん上げる。
中古のサニーは、一〇〇キロ以上にスピードアップすると警戒音がチンチンと鳴る。
それでも構わず、「よし、前の車を抜いてやる」とばかりアクセルを踏み込む。さすがのパパさんも「おいおい、いい加減にしろ」とたしなめている。
パーキングエリアで首輪をつけて離されるが、広すぎてかえって不安になる。木の陰に行こうとする。
「マリちゃん、おしっこをしなさい」と言われるが、そんな節操のない躾は受けていない。家族はそれぞれにジュースを飲んだりして、再び出発する。
「マリちゃん、おしっこをしなさい」と言われるが、そんな節操のない躾は受けていない。家族はそれぞれにジュースを飲んだりして、再び出発する。
ママさんは娘から、長男への運転交替を指示する。
長男は「しょうがないな」と言いながら、妹と交替して運転する。
走るとまもなくマリオは車酔いになって「アーオ」と欠伸のような鳴き声をあげて、調子の悪さを訴える。
南部富士(岩手山) とにかく、難行苦行の連続で雄大な南部富士の岩手山が見えてきて「マリちゃん、もう少しだよ」と声を掛けられるまで、忍耐の二時間過ごさなければならない。
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