2008年11月22日土曜日

青年時代

ー隣の姉妹ー

 今まで空き家だった隣の社宅に引っ越ししてきた。パパさんが国鉄本社に勤めていた時の知り合いらしい。

 夜になって隣人夫妻が恒例の引っ越し挨拶にきた。パパさんとママさんは「よろしくお願いします」と挨拶している。帰ってから、ママさんが「子供が小さいのね」と言っている。

 パパさんは「まだ、若いからな」と答えた。

 二三日経って、玄関で遊んでいる女の子にママさんが話しかけた。

 「お名前は何て言うの」

 「○○」

 「アレ、うちのお姉ちゃん(娘)と同じだね」

 「一人で寂しいね、おばちゃんのおうちにおいで」と言って三才の女の子を家に連れてきた。

 「あっ、おばちゃんのところに猫ちゃんがいるの」

 「お名前はなんていうの?」

 マリオは大の苦手の子供なので、早々に次男の部屋に逃げ込んだ。

 女の子は「横浜のおじいちゃんのうちに猫ちゃんがいるの」と言った。

 ママさんは「あーそー、じゃー、猫ちゃんが好きなのね」と聞いた。女の子は「ウン」と言った。

 それから女の子は「マリオのおばちゃんのところに行ってくる」と言って、毎日のように遊びにきた。
 時々、ママさんは〇才の妹も預かった。

 マリオも最初のうちは警戒していたが、来る回数が頻繁で行動が制限されるのも窮屈なため、恐る恐る近寄って見た。

 それにママさんが居るのでやや安心感もある。女の子は「マリちゃん」と声をかけるがいじめる気配はなかった。

 ママさんが預かった〇才の子は、まだ自由に行動出来ないので居間のソファーに寝せられている。マリオが近寄らない限り問題は起こらないが、マリオは遠くから眺めるだけで、大嫌いな赤ちゃんに近寄る気はサラサラない。

 猫に慣れているためか、マリオには優しい姉妹だった。

 マリオが子供に気を許したのは、長男の孫ちゃんとこの姉妹だけかもしれない。

 後日、会社の運動会で姉妹のママさんが競技に出場するため、パパさんに妹の方の赤ちゃんを預けた。

 久し振りで赤ちゃんを抱いたパパさんは、大事そうに抱いて競技を見ていた。通り掛かった若い社員が「孫ちゃんですか」と言った。

 「ばか言え、娘だよ」と言いながらパパさんは満更でもない表情をしていた。



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