2008年6月6日金曜日

育ち盛り

―職探し―

パパさんの髪は薄い。子供たちは当たり前だと思っている。マリオも気にならない。ママさんだけが気がかりなようだ。

「お父さん、最近(頭が)薄くなってきたわよ」と注意している。

毎晩帰りが遅く、出張も頻繁にある。

いよいよ、国鉄の民営化作業が胸突き八丁になってきたらしい。

パパさんが一番胸を痛めていることは部下たちの雇用問題だ。国鉄に生涯の夢を託して就職した部下たちの人生を変えるという苦渋の作業がパパさんの頭を悩ましている。

パパさんは東北一円の会社リストをもとに、職員受入れのお願い行脚に週の半分は出かける。

仕事でお付き合いのある自治体のトップにもお願いする。

数え切れない訪問先での応対は色々らしい。国鉄解体に対する同情論にはじまり、逆に厳しい国鉄批判など、全て頭を低くしてひたすら余剰人員と称される国鉄職員の雇用をお願いして歩く。

中には国鉄と聞いただけで、門前払いを受けることもしばしばあった。

それでもパパさんは部下たちに対する思いで一生懸命だった。

正に髪を振り乱してという表現が当たるが、頭を悩まして振り乱すもの(髪)が薄くなったのかも知れないとマリオは同情していた。

〈うわさの大工〉

2008年6月4日水曜日

育ち盛り

ーライオンー

 日本中の三越デパートの入り口には必ずライオンの座像がある。マリオも同じ格好が大好きだ。

 寝る時はでんぐり寝が大好きだが、起きていてリラックスしている時はソファーの上で前足を前に伸ばしたライオン座りが落ち着く。 あまり意識はしてないが、何となく威厳があるような気がしないでもない。それに家の中を観察するには楽な姿勢である。家族の動きが一望できる。

 時々、床の上で足を前に揃えて立ち座りをしていると、「マリちゃんは猫背だねぇー」と娘が感心したように言う。「猫に向かって猫背とは、よく言うよ」と思うが反論しない。

 陸上の哺乳動物の中で肉食獣の仲間は二つに分かれる。イヌ科とネコ科である。

 現在、勢力的にはイヌ科が優勢だが、個々の腕力を比較するとネコ科に軍配が上がる。ライオンを筆頭に虎とか豹、チーター、ジャガーと敏捷で逞しい面々がそろっている。

 その中で猫は体が小さいけれども、能力的には最高のハンターと言われている。

 人間の生活が貧しい頃は、猫はネズミの大敵であった。蛇も捕まえた。鳥も捕まえた。

 今は、チョッと堕落して、ペットフードで満腹にし、ネズミは玩具代わりである。風上にも置けないと思うが中には、ネズミを見て逃げる猫もいるそうだ。
白いライオン 雀や蛙で鍛えているマリオは、同族のふがいなさを嘆いていた。


2008年6月1日日曜日

育ち盛り

ーでんぐり寝ー
 

 寝相が良いとか悪いと言うのは、何を根拠にするかと言うと姿勢の問題であろう。普通、猫は歌の文句にあるように「丸くうずくまるように」寝るのが良いと思う。その方が暖かいし、身を守るにも良い。
 俗に、寝相の悪い人間というのは蒲団の中で暴れる人を言うらしい。何故そうなるかと言うと、寝る姿勢が一貫してないからだ。横になったり、あお向け、俯せと考えられる体勢を繰り返して寝るから、掛ける布団も面倒を見切れなくなる。
 その点、猫は蒲団を掛けて寝る事はまれであるから、自由な寝姿がとりやすい。丸くなったり、伸びたり、自由自在である。
 マリオの寝始めは四肢を伸ばして手に頭をのせるうずくまり姿勢だが、寝ている内に横寝スタイルになる。
 寒い時は体の下に手と足を入れ、さらに頭をその中に押しつけるように丸くなって寝る。最初のうちはそれで良いが、この姿勢は結構筋肉を使う事になる。眠りながらの防護姿勢でもあるが、眠り込んで筋肉が弛緩してくると、どうしてもだらしがなくなる。
 特に、夏の暑い日は寝苦しい。長毛のためさらに暑さが倍加する。そうなると、一番楽なスタイルは人間と同じようなあお向けが良い。腹も涼しいし、長毛も気にならなくなる。
 前足と後ろ足の落ち着きが悪いが、そんなことは気にしない。背骨を真っ直ぐにしてあお向けになるとなんとか治まる。
 この寝姿を次男は「でんぐり寝」と名付けた。
 一般的に、動物が腹を見せて寝るということは、無防備極まりない。動物の一番の弱点が腹部なのだ。
 犬の場合、人間に腹を見せる姿勢を取る事は「あなたに服従します」という意思の表れである。
油断だらけ 「でんぐり寝」はそれ程意味のあるスタイルなのだが、マリオはあまり深く考えていない。