2008年10月4日土曜日

青年時代

ー留守番ー

 車を買ってから、やたらと外出することが多くなった。

 特にママさんは娘の運転で重宝しているようだ。車を買う時、娘がパパさんに約束したことを、自分への約束にすり替えて「あそこに乗せてって」とか、出先のデパートから「迎えにきて頂戴」とフルに利用していた。

 夏休みを前に、ママさんの実家に行く相談をしていた。娘は「皆で行こう」と提案している。マリオは(勘弁して欲しいナー)と思っている。パパさんが夜遅く帰ってきて娘が聞いた。

 「お父さん、今度の金曜日盛岡に行かない」

 「駄目だよ、仕事があるから」

 「フーン」

 娘は翌日ママさんと相談して、パパさんとマリオを留守番にすることにした。

 かくして、マリオはパパさんと2人(一人と一匹)で留守番することになった。

 留守番の初日、パパさんは朝御飯をそそくさと食べたり、マリオに餌を食べさしたりして出勤していった。残されたマリオは自由に廷内探訪をする。部屋の戸は全てマリオが出入りできるように開けていった。家中好き勝手に歩き回り、寝たい時に寝て自由気ままな一日を過ごしていたのである。

 夕方になって腹が空いても、朝にたっぷり入れた餌が半分以上残っていて、別に不都合はなかった。さすが夜になると、いつもなら家族が居るのに誰も居ないというのは寂しくて仕方がない。

 頼りのパパさんも帰ってくる気配はない。

 12時近くに、玄関の鍵がガチャッと音がした。マリオは寝ていたが玄関に出てみると酔っ払ったパパさんがふらつきながら靴を脱いでいた。マリオは(遅いぞ、何していたんだ)という態度で寝ていたところに踵を返した。

 パパさんは「おい、マリオ」と呼んだ、ふり向きもしない。

 「そうか、寝るか」といって歯を磨いてパジャマの着替えもそこそこに蒲団に潜りこんだ。

 翌日の朝も前日同様、パパさんはバタバタと出て行った。マリオの食器には山盛りに餌が盛り上がっている。

 その日はどういう訳か、訪問者が多くてひっきりなしにチャイムが鳴った。のんびり寝る暇がないくらい多かった。

 ひとりで留守番のマリオは心細くなった。夕方にはママさん達も帰るだろうと心待ちにした。夕方になっても誰も帰ってこない。

 さすが夜には訪問者はなくなったが、ひとりぽっちのマリオには寂しさがつのる。

 頼りのパパさんは相変わらず帰って来る気配がない。食欲も湧かない。

 深夜12時をちょっと回った時刻に、玄関の鍵がカチャカチャなった。

(あっ、パパさんだ)マリオは嬉しくなって玄関に飛んでいった。

 ふらふらとしたパパさんが入ってきた。

 酔眼朦朧としたパパさんに「おっ、マリオ」と声をかけられた。

 「ニャーお」と返事をしたマリオは、本当に嬉しくて、嬉しくて、家中を全速力で走り回りながらお腹が空いていることを思い出していた。

 


                             遅いよ

2008年9月28日日曜日

青年時代

ー運転免許と車ー

 大学生になったばかりの娘が自動車学校に行きたくて、ママさんに催促している。

 「お兄ちゃんの時は、高校を終わって直ぐに(運転免許を)取らしたのに」

 ママさん「そんなこと言ったって、お父さんに言いなさい」

 「(免許と車が)あれば便利よ、買い物も楽だし、マリオの病院だってタクシーを使わなくて良いし、(盛岡の)お祖母ちゃんのとこだって車で行けるし」

 パパさんは夏のボーナスが出たら、自動車学校に通わせる積もりでいたが、そんなことはお構いなしの要求である。

 娘は大学の友達のパパさんが自動車の販売会社にいて、頼むと(中古の)車を安く買える話を聞いて、夏までには運転免許を取りたかった。

 パパさんにすれば、娘の私立大学の入学金を払った直後で、とんでもない話しだった。

 しかし、娘はくじけなかった。

 「お父さん、分割で良いから、学校に通っていい?」

 パパさん「しようがないな、幾らかかるんだ」

 とうとう、自動車学校に通い始めた。

大学の合間にせっせと通い、2か月も掛からないで運転免許を取ってしまった。

 免許を取ると、次はマイカーである。娘は山の上にある大学は通学に不便なことをパパさんに訴え始めた。

マリオはパパさんに同情しながら聞いていた。

 パパさんは財布が休む暇がないとこぼしている。

 娘は「お父さん、中古だけど安くて良い車があるから」と迫っている。

 「見るだけで良いから」と日曜日にママさんも一緒に連れ出して、販売店に出かけた。

 パパさんは娘の友達のパパさんと話をしている内に、何となく買う気になっていた。

 真っ白いサニーが社宅前の駐車場に鎮座した。

 娘は意気揚々と自動車通学を開始した。

 長男は「お父さんは、○子に弱いんだから」とひがんでいたが、共有感覚でちゃっかり乗り回していた。

 マリオも時々乗せて貰った。

 幼い頃に乗ってないので乗り心地は良くなかったが、窓越しに見える街の風景が珍しくて、車の窓にへばりついて乗っていた

                  家にいるほうが良いんだけどな