2008年3月16日日曜日

幼い頃








ーおねだりー
 育ち盛りのマリオにとって、餌を貰うのが楽しみだった。娘が居る時は優先的に食事の準備をしてくれたが、ママさんは「猫より人間が先」という哲学があって後回しにされた。
 プライドが先行する猫族としては、やってはならない事であるが背に腹は変えられないとばかり、おねだり作戦を実行する事にした。 夕飯の支度に忙しそうなキッチンのママさんの足元に回りついた。
 「マリ、邪魔よ」と素っ気ない。諦めようとしたが、空腹が治まる訳ではない。
 次なる手は実力行使である。
 爪を立ててママさんの足にまつわる。
 「あれ、マリちゃん、どうしたの」と、それでもマリオの訴えを理解する気配がない。
 さらなる作戦は声で訴える。
 「ニャーオ!」(餌をちょうだい!)
 「何なのよ、アッ、お腹が空いているの?」
 「ニャーオ」(そうだよ)
 ようやく、マリオの「プライドかなぐり作戦」は成功した。






 その後も人間優先のママさん哲学は生きていたが、その度実力行使した。
 何度か繰り返している内に、ママさんもおさんどんの邪魔になるため、方針を変更してくれた。
マリオがプライドを捨てて媚びたのは、これ以外あまり記憶がない。






ー友達ー
 家族五人と猫一匹の暮らしは快適であったが、時々寂しくなる事があった。
 それを察したのか、娘が子猫の縫いぐるみを買ってくれた。兄弟猫達とは似て似つかない薄茶色のもので、最初の内はじゃれたりしていたが反応がない。その内あまり関心がなくなった。居間の片隅に押し込んで無視した。
縫いぐるみ 「折角、買ってあげたのに」と言っていた娘が、又別な縫いぐるみを買ってきた。今度は、小猿の縫いぐるみである。見た事もないかたちで、ちょっぴり興味をそそられた。娘は縫いぐるみの後ろを持って、挑発するようにマリオに押しつけた。親愛感とともに、闘争心も感じられ飛び掛かった。娘も縫いぐるみを操って戯れた。益々、飛びついて爪を立てたり、噛み付いたり、抱きついて猫キックを見舞ってやった。なかなか面白い。一緒に寝たり、気が向くとじゃれたりして、マリオは小猿の縫いぐるみがお気に入りになった。
 それからしばらく経ってから、パパさんとママさんが庭を造成した祈願に八幡神社にお参りに行った時、境内の物売り屋さんから、亀を買ってきた。ママさんが、マリオがひとりで寂しいからと言って買ったらしい。
 ママさんに「はい、マリちゃんお友達よ」と言って目の前に置かれたが、小猿の縫いぐるみと同じ初めて見るもので何かわからない。 おまけに、手も足も顔もない。でも生き物という感じはするので、しばらくじっとして見ていると顔が出てきた。まわりを見渡していたが、マリオを見るとびっくりして顔を引っこめた。
 マリオは害を加えそうもないので顔を出すのを待っていたが、なかなか顔を出さないので恐る恐る甲羅に手をかけた。ビクともしない。テラス戸の方に行って様子を見ているとしばらく経ってから、亀は顔を出し手と足を出してノソノソと歩きだした。
 ちょっと気持ちが悪い。
 それでも良く見ると形はおかしいが、愛嬌のある顔をしている。マリオは小さい亀に何となく親近感が湧いてきた。
 普段は広い居間でお互い勝手きままに動いているが、何となく意識し合っている。 そして、一匹同士の親愛感情が生まれた。

幼い頃



ーおねだりー


 育ち盛りのマリオにとって、餌を貰うのが楽しみだった。娘が居る時は優先的に食事の準備をしてくれたが、ママさんは「猫より人間が先」という哲学があって後回しにされた。


 プライドが先行する猫族としては、やってはならない事であるが背に腹は変えられないとばかり、おねだり作戦を実行する事にした。

 夕飯の支度に忙しそうなキッチンのママさんの足元に回りついた。


 「マリ、邪魔よ」と素っ気ない。諦めようとしたが、空腹が治まる訳ではない。




 次なる手は実力行使である。
 爪を立ててママさんの足にまつわる。


 「あれ、マリちゃん、どうしたの」と、それでもマリオの訴えを理解する気配がない。


 さらなる作戦は声で訴える。
 「ニャーオ!」(餌をちょうだい!)


 「何なのよ、アッ、お腹が空いているの?」
 

「ニャーオ」(そうだよ) ようやく、マリオの「プライドかなぐり作戦」は成功した。



 その後も人間優先のママさん哲学は生きていたが、その度実力行使した。


 何度か繰り返している内に、ママさんもおさんどんの邪魔になるため、方針を変更してくれた。


 マリオがプライドを捨てて媚びたのは、これ以外あまり記憶がない。