2008年11月16日日曜日

青年時代



 娘の自動車運転熱は大変なものだ。ほとんど毎日、山の上の学校通学に利用しているためもあって運転技術も相当なレベルになっている。

 休みになると、家にじっとしていられない。特に連休になると遠出をしたくなるらしい。

 「今度の休みに(盛岡の)お祖母ちゃんの家に行かない」とくる。

 マリオはぞっとする。とにかく車に弱い。

 話がまとまって出かけることになる。娘は「マリちゃんも連れて行くからネー」とくる。

 盛岡までは距離が二〇〇キロで、高速道路で約二時間かかる。

 二時間も家族五人と狭い車の中で過ごすのも大変であるが、おまけにマリオは車酔いをする。車に乗るとペット用のバスケットから出されて自由になるが、動く空間がほとんどない。

 それでも家族の膝の上や足の下をくぐって快適な場所を探すが、どこにも見当たらない。狭いところは嫌いではないが、行動を制約されるのが嫌である。高速道路のため、大好きな外の景色も車が一瞬に通り過ぎるだけで面白くない。

 その上、娘はハンドルを握ると人が変わる。まず第一に口が悪くなる。

 ママさんに「あなたは、女の子なんだからネー」と注意されても聞き入れない。それにスピードをどんどん上げる。

 中古のサニーは、一〇〇キロ以上にスピードアップすると警戒音がチンチンと鳴る。

それでも構わず、「よし、前の車を抜いてやる」とばかりアクセルを踏み込む。さすがのパパさんも「おいおい、いい加減にしろ」とたしなめている。

 パーキングエリアで首輪をつけて離されるが、広すぎてかえって不安になる。木の陰に行こうとする。
「マリちゃん、おしっこをしなさい」と言われるが、そんな節操のない躾は受けていない。家族はそれぞれにジュースを飲んだりして、再び出発する。

 ママさんは娘から、長男への運転交替を指示する。

 長男は「しょうがないな」と言いながら、妹と交替して運転する。

 走るとまもなくマリオは車酔いになって「アーオ」と欠伸のような鳴き声をあげて、調子の悪さを訴える。

南部富士(岩手山) とにかく、難行苦行の連続で雄大な南部富士の岩手山が見えてきて「マリちゃん、もう少しだよ」と声を掛けられるまで、忍耐の二時間過ごさなければならない。

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