一晩、マリオの骨を祭壇にあげて、翌日埋葬に出かけた。
マリオを埋葬して夫婦で帰る道すがら、野良風の猫にあった。赤い虎模様である。チッチッと舌を鳴らすと逃げないで見上げている。
妻は「アッ、猫ちゃんだ」と言って近づいて頭をなでてやる。
夫婦で立ち止まっていたが、そこに居るのはマリオではない。
妻は「元気でね」と言って、立ち去った。
振り返ると、猫はキョトンとした表情で我々を見ていた。
家に戻り、中途半端になっている引っ越しの片付けを始めた。全く気が乗らない。
マリオの突然死騒動で、なんとなく片付いているのは仏壇をセットした一階の和室のみで、他の部屋は段ボール箱の山である。
盛岡に引っ越してから三日目であるが、今までの転勤のように翌日から出勤というわけでもなく、急ぐ必要もないためにゆっくり片付けることにした。
気の乗らないまま、段ボールを持って運ぶと物陰にチラッと白い物が見える。
瞬間的に「アッ、マリオ!」と錯覚してしまう。
喪失感より不在感が強いのだろうか。死んだと思っていてもついそう感じてしまう。
このことは数か月続いた。
妻も同様で、「白いのを見ると、アレッ、マリちゃん、と思うよね」と言った。
段ボールの探し物
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