2008年9月21日日曜日

青年時代

ー新幹線初乗車ー

 娘が高校を卒業して仙台の大学に入ったので、仙台に家族全員引っ越しすることになった。

 仙台にはパパさんと2年前大学生になった長男と先に行っていたが、家族全員揃うと狭いので、パパさんは今までの狭い社宅から広い社宅に移った。

 荷物は10トントラックで行くが、家族は新幹線で移動する。問題はマリオである。

 動物は新幹線に乗せられるかという疑問が生じたが、パパさんの一言で解決した。

 「ペット用のバスケットに入れて、犬でも猫でも乗ってるよ」という既成事実が、家族の心配を打ち消した。

 厳密に考えると駄目だったかも知れないとパパさんは今でも気にしているようだ。

 何はともあれ、トラックを追いかけるように翌日の早朝、新幹線に乗り込んだ。最初のうちは、マリオは人込みの中で慎重にしていたが、初めて乗る新幹線に酔ってきた。バスケットの中で、おそるおそる鳴き声をあげた。

 そばにつきっきりだった娘が気がついた。小さな声で「どうしたの、マリちゃん」と話しかけた。

マリオはもう一度小さく「ニャーォ」と鳴いた。

 娘は「お父さん、マリオが調子悪いみたい」とパパさんに訴えた。

 パパさんは一瞬困ったが「よし、デッキに行こう」と言ってバスケットを持って席を外した。娘も一緒にいって「マリちゃん、もう少しだからね」と声をかけた。

 一時間足らずであったが、マリオの生まれて初めての新幹線乗車は散々だった。

 仙台に着いてタクシーでパパさんの社宅に向かった。

 「マリちゃん、ここが新しいおうちだよ」と言われて中に入る。

 今までと違う匂いがする。部屋から部屋を匂い探訪したが、家族の匂いはどこにもない。

 救われたのは同族の匂いがなく、これからはこのスペースがマリオの縄張りになるということだった。

 昼過ぎに荷物が着いて、会社から若い社員が大勢手伝いにきた。パパさんは来なくて良いと断ったらしいが、帰すわけにいかず手伝って貰って一〇トントラックいっぱいの荷物はあっと言う間に片付いてしまった。夜になって簡単な夕飯になり、マリオも何となく落ち着いた。

 四年振りに家族全員が揃ったという安心感があった。

                                邸内探索

0 件のコメント: