2009年4月12日日曜日



ーエーゲ海の猫ー

 パパさんは、翌年の春に娘が結婚し次男が大学院に進学することを機会に、長年の夢を実現しょうと決心した。

 現在の会社も約束した丸三年になる。JRへの最低の義理は果たしたと考えていた。

 建築と都市計画と環境デザインのオフィスを立ち上げようと考えていた。

 今までのサラリーマン生活に区切りをつけるため、現代の都市と建築の源流であるギリシァに旅行を計画した。

 過去の海外旅行の経験から、ヨーロッパは五月か六月が気候的にもベストシーズンである。パパさんは、五月は旅費が高いので六月に行くことにした。

 ママさんも一緒に行くことになり、ママさんとしては三度目の海外旅行で、カナダ、フランス、イギリス、イタリアについで五ヶ国目である。

 「言葉が通じると外国旅行も良いんだけど、ギリシァじゃネー」と言っているが、浮き浮きした感じは隠せない。

 「マリちゃん、留守番お願いね」と言って出かけた。

 娘も次男も居るから、どうぞ、行ってらっしゃい、の心境だ。

 ギリシァに行く途中パリ経由だった。ママさんは二度目のパリである。

 パパさんは三度目である。アテネにフライトするまで時間があったので、娘に頼まれたブランドのバッグを買いにドゴール空港からタクシーで街に出た。同乗したおばさん達と待ち合わせ場所と時間を約束してショッピングに行った。

 途中にオペラ座がありその前でママさんのワンショットの写真を撮っていたら、親切そうなフランスのおじさんが来て「トギャザ、トギャザ」と変な英語を使ってパパさんとママさんのツーショットを撮ってくれた。ママさんはさすが観光の街パリと感激していた。 その後がいけなかった。「ワンモ、ワンモと言って自分のインスタントカメラで二枚写された。代金が二〇フランだと請求された。

 パパさんは空港で両替した二万円分のフランスフランの中から払った。そのおじさんは「ジャポネ、リッチ、リッチ」と言って通りの向こうに行った。

 パパさんはブランドショップに急ぎ足で向かいながらレートを暗算して「あいつ!」と叫んだ。インスタント写真は日本円にして五千円以上の計算だったからである。

 ママさんはツーショットの写真が気に入っていたので「良いじゃないの、写真を撮って貰ったんだから」とけろっとしていた。

 ブランドショップはシャンゼリゼ通りから横に入った店で前にも行ったことがあって、ジャパニーズイングリッシュでも充分話が通じ、娘と長男の嫁さんの土産にバッグを買った。その後が大変だったらしい。


オペラ座前の写真騒動のため、約束の時間が迫っていて約束の場所まで夫婦で走ったそうだ。

 「シャンゼリゼを日本人の夫婦が走って、フランス人はびっくりしたでしょうね」とママさんが笑っていた。

 無事アテネに着いた翌々日、エーゲ海のスーニオン岬に向かう途中ランチタイムになり、海辺のカェテリアに寄った。

 カェテリアの周辺には観光客目当ての野良猫がいっぱい居た。

 ママさんは「ウワー、ギリシァの猫ちゃんだ」と感激しながら、マリオを思い出していた。

 帰ってから「頭が良いのよ、お父さんが肉をあげて、ジ・エンドと言ったら(ギリシァの猫は)おねだりしないんだから」と報告していた。

 マリオは(当てつけかなー)と思いながらママさんの横で神妙に聞いていた。


                   エーゲ海の猫たち



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