2009年1月7日水曜日

壮年期



 長毛の動物は保温というメリットを除くとあまり良いことがない。猫族はほとんど短毛種が多い。古来、野山で過ごしていた時代は短毛だった。柄は自然色に近い色と周辺環境に馴染んで、狩りに便利なようにデザインされていた。

 猫の長毛種は人間と住むようになってから、人間の趣向に合わせて品種改良されたものだ。
 ペルシァ種のマリオも長毛のため、少なからずのハンディを背負っている。第一に毛並みの手入れが大変だ。

 短毛ならさっさっと済むけれども長毛は時間が倍以上かかし、舐めた毛が舌から腹に入る。繰り返していると胃袋で毛玉になる。時々吐きださないと体調を崩す。

 その上、季節の変わり目は抜け毛が激しい。激しいと言うより、白い毛は目立って仕方がない。ブラッシングやシャンプーが嫌いと言える身分ではないが、嫌いなものはやっぱり嫌いだ。

 

 さらに長毛の不便な点は排便の時である。お尻を専用トイレの砂にきっちり押しつけて所用を済ませるが、たまに体制が良くない時にお尻の回りの毛に排泄物が付着する。

 マリオとしても、用便後の手入れはするが、白いところに黒っぽい物がつくから目立つ。匂いもするから、家族にくんくんされる。

 娘に「マリオだな」と原因をキャッチされて、ティッシュペーパーで拭いて貰う。その後、さらにママさんと娘の二人掛りでお尻回りの毛のトリミングが始まる。

 痛くはないが、娘におしっこスタイルで抱かれてママさんがピカピカ光るステンレスの鋏で、お尻の回りをチョキチョキやられるから恐ろしさが先に立ち反抗したくなる。

 トリミングの後はお尻の回りが軽くなったようですっきりする。

 もう一つの難点は、外出禁止の状態で飼われると足の裏の毛が生える。特に長毛種は伸びるのが早いから、放っておくと毛のスリッパを履いたようになる。

 外に出ると土の上を歩いたり、運動も激しくなるから自然に擦り切れて毛が生えることはないが、箱入り生活ではどうしょうもない。

 足の裏は猫の行動する時の生命線だ。ヒゲと同じくらいの性能を持っている。歩行面の状態を確認しないで歩くことは、誠に不用心だ。地面の状態を足の裏で感知して周辺の状況に注意しながら行動することが、野生の本能なのだ。

 家の中のフローリングは、毛のスリッパ状になった足では誠に具合が悪い。急ぎ足になると滑って自由に歩けない。爪を立てながらゆっくり歩かなければならない。機敏さをもって良しとする猫にとって、まことに不便きわまりない。

 飛び移る時などは、滑って落ちたりする。猫としてはあるまじき光景で、娘はケラケラ笑っている。
 みかねたパパさんが足の裏の毛を切ろうとするが、トリミングと同じステンレスの鋏なので恐ろしくて切らせない。パパさんは暴れた状態で無理に切ると、足裏を傷つけそうになるので、マリオが寝込んだ時を狙って切る。

 パパさんのマリオに対する唯一の役目が足裏の調毛である。

 目が醒めて歩くと、まるで若返って裸足で歩いているような野性的軽快感が蘇ってくる。
                仕方がないんだよ!

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