2008年10月11日土曜日

青年時代


ーネバーギブアップー

 仙台にきて2年目の夏。例年にない猛暑になった。毎日真夏日の続く熱暑だった。長毛のマリオには地獄の沙汰である。日光浴は大好きだが、そんな暑さでない。家の中で涼しいところを見つけて歩く。

 取りあえず玄関のコンクリート。やや快適だけれども、家族が出入りしたり、来客があると落ち着かない。次は浴室。ヒャッとしてマァマァ快適だが、湿っぽいのが玉に傷である。

家族も我慢の限界にきていた。特にママさんは「あなた達は外で涼しいところに居るから良いわね」と言っていた。

 強烈なのは娘である。家に帰ると「何、この家は、今ごろクーラーのない家なんてないよ」である。

 ママさんはパパさんに訴えた。

 「あなたは会社で涼しいから良いだろうけど、(クーラーのない)家に居る人は堪らないわよ」

 「何言っているんだ、東京でも我慢したんだから、我慢、我慢、そのうち東北は涼しくなるよ」

 ムッときたママさんは「あんたは良いわよ、お酒を飲んで寝る時しか帰って来ないんだから」と言った。マリオもうなずいた。

 パパさんはこの言葉にはグラッときた。

 猛暑は涼しくなるどころか、8月に入っても治まる気配がない。ママさんとマリオは唯々、耐えていた。

お盆近くのある土曜日、娘の堪忍袋の尾が切れた。

 「お父さん、マリオが死んだらどうするの」とパパさんに迫った。

 パパさんはお盆が過ぎると涼しくなる、もう少しの辛抱だと考えていたが、長毛のマリオを引き合いにされると弱かった。

 「あした買いに行くか」

 家族とマリオはしめしめである。

 ところが、市内の電器屋は在庫ゼロで、ディスカウントショップをはじめ行く店がことごとくクーラーは売り切れだった。それぐらい凄い夏だった。

 パパさんとママさんは諦めかけたが、娘は「ネバーギブアップ」精神を発揮した。

 郊外の大型スーパーでとうとう展示品のエァコンを見つけた。取り付けは手が回らずお盆過ぎになったが、念願のクーラーがついた。

 ママさんは「マリちゃん、涼しくなって良かったねー」とマリオの頭をなでた。

 猛暑は10月半ばまで続いた。


                            涼しいよん!


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