2008年8月2日土曜日

青年時代

ー子供達が気になるー

 避妊手術はお尻に注射をされて、スーっと意識がなくなって気がついたら終わっていた。 家に帰ってから患部が気になり、しょっちゅうなめていた。

 傷が治り、普段の生活に戻ったが、どうも以前と違う。家出した後も外の仲間達が気になって仕方がなかったが、手術をしてからは「アー騒いでいるな」という程度の気掛りである。

 頭の中のモヤモヤが無くなった。平穏な日々が続く。餌を食べて寝るの繰り返しである。夜もぐっすり。深夜のオペラは歌う気にもならない。恋を謳う歌手廃業である。

 食っちゃ寝の結果、体重は六キロになった。白い長毛と首回りの毛がふさふさとして堂々たるペルシァ猫になった。

 それにしてもこのままでは退屈だ。いつも一緒のママさんは家事で相手をしてくれない。パパさんは週末しか居ない。高校生の娘と中学生の次男は夕方でないと帰って来ない。

いつも家に居るのは大学浪人の長男だけだ。マリオが幼い頃は予備校に通っていたが、二年目から家で勉強している。勉強しているといっても、マリオがくぐり戸から入ると寝ているか、ステレオをボンボンかけている。

ママさんが外出したりすると、家に居るのは長男だけになる

仕方がないからママさんが帰るまでは長男の部屋にいることにした。

無愛想であるが、気が向くと相手をしてくれる。さらに気が乗ると本気になる。

最初は手でジャラシているが、はずみで爪を立てるので、手をシャツの中に入れてしつこくジャラシてくる。

 必死に対抗しているうちに、噛みつきや後ろ足の猫キックでお返しをしてやる。マリオもいい運動になるが、長男の着ているシャツの袖口はボロボロになる。

 長男はママさんにいつも「やめなさい」と叱られているが、部屋に行くと同じだ。

 たまに勉強しているところに行くと見向きもしないが、かたわらに座っていると数分後には、手をシャツの袖口に引っ込めてじゃらしが始まる。

 マリオは受験勉強のストレス解消なのかもしれないと思い、噛みつきや爪立て、猫キックでたっぷり応酬してやる。

 

〈うわさの大工〉

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