2008年7月26日土曜日

青年時代

―猫の民営化―

パパさんの会社は親方日の丸(国営)から株式会社に変わった。単身赴任のパパさんは忙しそうだが、結構張り切っている。

人間社会の仕組みはよくわからないが、猫の社会は二つに分類される。ペットとしての飼い猫と飼い主の居ない野良猫だ。ひと昔前は飼い猫でありながら天下往来自由の猫も居た。

日本が貧しく、社会の施設が整備されていない時代は病害虫も多かった。一般家庭の天敵にねずみが居た。そしてねずみの天敵が猫だった。猫は人間の住む家にある食物を狙うねずみを退治する大事な役割を持っていた。さらに、捕まえたねずみは猫の食料になった。猫を飼っている人間にとって一石二鳥の存在だった。

豊かな国になった日本で現在、猫はペットとして犬に対抗するペットの代表選手になった。犬は狂犬病という人間に危害を与える病気があるため、完全に管理された形の存在になり、野良犬という存在は無くなった。

猫は体が小さいということと人間に危害を加える場面が少ないこともあり、野良猫という存在がある。天下往来を自由に行き来してうらやましい存在だ、反面、生きるための餌は自分で調達しなければならない。

これに飼い主に捨てられた捨て猫という種族が加わる。野良猫より捨て猫の方が生きる環境は厳しい。街では食べ物を手に入れるのは難しい。日本が貧しい頃、魚を食わえて逃げる猫の風景は見られなくなった。ごみ収集方法の徹底で生ごみを漁ることもできない。

野良猫同士の同士の闘争も激しい。猫には特有の猫エイズがある。野良猫のエイズ保菌率は七〇%を越えるといわれている。猫エイズは生殖行動の接触より闘争の際に感染する。ただし、人間には感染しないので無罪放免になっている。これが、人間に害を与えるとなると野良猫の現在の平和な環境は一変するに違いない。

飼い猫の寿命は十五年ぐらいだが、外猫の平均寿命は猫エイズのせいもあり五、六年だ。過酷な生存環境は望むところではないが、マリオも自由を求めて家出をした。しかし、半月間のひもじさは大変なものだった。

家に戻ってホッとした思いは今でも忘れないが、性懲りも無く自由に対する未練はまだ残っている。

マリオは親方日の丸と民営会社の違いはよく判らないが、野良猫的な生きる工夫がパパさんたちに求められているのは間違いない。

 〈うわさの大工〉

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