2008年6月17日火曜日

育ち盛り



ーお琴と三味線ー

 娘は東京にいる時、お琴を習っていた。

 引っ越した社宅にパパさんと職場が同じ人がいて、すぐに家族ぐるみのお付合いになったそうだ。北海道出身で、今でも盛岡・札幌間でお付合いをしている。

 そこのママさんはお琴の先生で、娘より一つ年下の女の子がいた。女の子はお琴教室に通っていた。その女の子と友達になった娘は、ある日、女の子についてお琴教室に行った。

 お琴のおさらいを見ているうちに、娘は自分も習いたくなった。

 帰ってきて、ママさんに言った。ママさんは即座にOKした。娘は盛岡時代にピアノを習っていたが、東京に引っ越したため中座していた。

 娘はピアノよりお琴が向いていたのか、トントンとクラスをあげてお免状を貰った。

 東京に居た五年間に色々なところで発表会をしたらしい。

 盛岡に引っ越しするということになり、東京のお師匠さんは残念がった。盛岡に行っても続ける事を勧め、お師匠さんの後輩であるの芸大出身の先生を紹介してくれた。

 娘は、マリオがこの家に来るちょっと前から紹介された盛岡のお琴教室に通っていた。教室は週に一回であるが、高校の受験勉強と掛け持ちで結構忙しそうである。

 特に、発表会が近くなるとあわだだしい。一か月前から家でも練習する。普段もママさんは「家でも練習しなさい」と言っているが、ほとんどしない。

 何か切羽詰まらないと、その気にならないという人間の悪い癖だ。それでもお琴の練習をママさんと一緒に聞いていると、ホワンとしてマリオも落ち着いた気分になる。

 東京時代同様、発表会当日はパパさんも駆り出される。道具を運んだり、カメラマンになったり、録音をとったりで大変そうだ。

 「仕事より大変だよ」と言いながら、結構ハッスルしている。

 話は変わるが、お琴と三味線はセットになっているらしい。お琴も相当の上級になると三味線を習うことになる。

 ママさんは自分の好みもあって「三味線も習いなさい」と娘に薦めている。

 三味線の音響部は猫の皮を張ってあるため、マリオとしては止めて欲しいと思っている。同族の悲しい泣き声みたいな音色は聞きたくない。

 娘は「あんなお婆さんみたいなのは嫌」と言って習う気はないらしい。

 マリオは内心ホッとしていた。


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