2008年8月14日木曜日

青年時代




ー木登りー

 家の庭は結構広くて、パパさんが色んな木を植えていた。家を建ててから六年経過していたから、同時に植えた木は結構な大きさに成長していた。庭に出るのが好きだったマリオは、教わることもなく木に登ることを覚えた。

 特に好きな木は、人間の背より高いライラック(リラの木)と普源桜だった。

 普源桜には時々原色のきれいな毛虫がいて、足でからかうとピリッと刺される。刺されると足がピリピリとして、体の調子が悪くなる。時には一日中体調不良になってしまう。そういう時は、刺された足をせっせと舐めるが時間が経たないと治らない。

 それでも懲りずに木登りをする。

 猫は高い所に登るのを好むが、同類の豹も木登りが得意である。とにかく高い所に登ると世の中が良く見えるし、安全なのである。

 いつも下から見ている家族も、木登りをすると見おろせる。

 最初の頃は登ることしかできなかった。降りたくなると、鳴いて頼むしかなかった。その度、パパさんが脚立を持ってきて降ろしてくれた。

 そんなことを繰り返している内に降り方も覚えてしまった。しかし、具合の悪いことに庭に出る時は首輪をつけられるので、登った通り下りないと紐が絡んで首吊り状態になる。

 そんな経験を積んで木登りする時は、家族が近くにいる時に登るように心掛けている。 

ベランダや屋上も高くて良いが、やっぱり木の上はちょっぴり野生の本能をくすぐられるし、庭の王者になったような優越感がなんとも言えない。



〈うわさの大工〉

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