2009年1月28日水曜日

壮年期

ー本社転勤ー

 パパさんが本社に転勤になるらしい。仙台には六年いてトップである上司も三人目だったから潮時だったかもしれない。

 ちょうど、次男が高校三年で大学受験を控えていたこともあり、引っ越しは面倒だから単身赴任だとパパさんは言った。

 「最后のお勤めだな」と言って本社に転勤した。

 バブルがはじけつつある時期で、当時のJR本社にはバブル時代に策定された案件がどっさりあったらしい。その中に国鉄改革の総仕上げのシンボル的なプロジェクトとして本社ビルの移転計画があった。

 そのプロジェクトはJR発足直後から計画が継続されていて、パパさんが乗り込んだ時期は方向づけが出来ていた。残された問題は1,000億円近い高額な建設費だった。

 パパさんはそのプロジェクトの全容に一通り目を通して心の中で叫んだ。
「何じゃー、これは!」

 建設費もさることながら、赤字のどん底から立ち上がった民営会社の(いくら業績がよいとは言え)本社ビルとしてはレベルの高い設計だった。パパさんはこのままプロジェクトを進めると、建設技術陣に再び汚点が残るような予感がして気を引き締めた。

 パパさんは二、三ケ月、家に帰る毎に疲れた感じだった。転勤する時、前の勤務箇所のトップに「あそこは激職だよ」と言われていた。

 パパさんは常々「仕事はゲームだ」だと割り切っていたが、その時だけは往生したらしい。

 投資財務の担当部署と相談したり、設計を見直したり大変だったらしいが、当初の総事業費を半減した。会社の常務会で大筋の了解が出て、やれやれとなった。

 次々とプロジェクトのコストダウンをして、計画案件を進めた。

 本社に転勤したパパさんの口癖。

 「何のことはない、バブルの後始末担当だよ」

 猫族は自分以外の猫がしたことを引き継ぐという行為はしない。たまに優しい雌猫が捨てられた子猫を育てることもあるが、これも滅多にあることではない。基本的に自立実行が猫の生活信念である。

 飼い猫稼業をしていると、どうしても飼い主に手をかけてもらうことが多くなるが、マリオも自立志向が信条でありプライドである。



2009年1月7日水曜日

壮年期



 長毛の動物は保温というメリットを除くとあまり良いことがない。猫族はほとんど短毛種が多い。古来、野山で過ごしていた時代は短毛だった。柄は自然色に近い色と周辺環境に馴染んで、狩りに便利なようにデザインされていた。

 猫の長毛種は人間と住むようになってから、人間の趣向に合わせて品種改良されたものだ。
 ペルシァ種のマリオも長毛のため、少なからずのハンディを背負っている。第一に毛並みの手入れが大変だ。

 短毛ならさっさっと済むけれども長毛は時間が倍以上かかし、舐めた毛が舌から腹に入る。繰り返していると胃袋で毛玉になる。時々吐きださないと体調を崩す。

 その上、季節の変わり目は抜け毛が激しい。激しいと言うより、白い毛は目立って仕方がない。ブラッシングやシャンプーが嫌いと言える身分ではないが、嫌いなものはやっぱり嫌いだ。

 

 さらに長毛の不便な点は排便の時である。お尻を専用トイレの砂にきっちり押しつけて所用を済ませるが、たまに体制が良くない時にお尻の回りの毛に排泄物が付着する。

 マリオとしても、用便後の手入れはするが、白いところに黒っぽい物がつくから目立つ。匂いもするから、家族にくんくんされる。

 娘に「マリオだな」と原因をキャッチされて、ティッシュペーパーで拭いて貰う。その後、さらにママさんと娘の二人掛りでお尻回りの毛のトリミングが始まる。

 痛くはないが、娘におしっこスタイルで抱かれてママさんがピカピカ光るステンレスの鋏で、お尻の回りをチョキチョキやられるから恐ろしさが先に立ち反抗したくなる。

 トリミングの後はお尻の回りが軽くなったようですっきりする。

 もう一つの難点は、外出禁止の状態で飼われると足の裏の毛が生える。特に長毛種は伸びるのが早いから、放っておくと毛のスリッパを履いたようになる。

 外に出ると土の上を歩いたり、運動も激しくなるから自然に擦り切れて毛が生えることはないが、箱入り生活ではどうしょうもない。

 足の裏は猫の行動する時の生命線だ。ヒゲと同じくらいの性能を持っている。歩行面の状態を確認しないで歩くことは、誠に不用心だ。地面の状態を足の裏で感知して周辺の状況に注意しながら行動することが、野生の本能なのだ。

 家の中のフローリングは、毛のスリッパ状になった足では誠に具合が悪い。急ぎ足になると滑って自由に歩けない。爪を立てながらゆっくり歩かなければならない。機敏さをもって良しとする猫にとって、まことに不便きわまりない。

 飛び移る時などは、滑って落ちたりする。猫としてはあるまじき光景で、娘はケラケラ笑っている。
 みかねたパパさんが足の裏の毛を切ろうとするが、トリミングと同じステンレスの鋏なので恐ろしくて切らせない。パパさんは暴れた状態で無理に切ると、足裏を傷つけそうになるので、マリオが寝込んだ時を狙って切る。

 パパさんのマリオに対する唯一の役目が足裏の調毛である。

 目が醒めて歩くと、まるで若返って裸足で歩いているような野性的軽快感が蘇ってくる。
                仕方がないんだよ!

2009年1月4日日曜日

壮年期


                 厳しい門限監視係


 就職して1年も経つと、世の中に慣れてくるのか、子供達も帰りが遅くなる。

 パパさんを筆頭に長男、娘と3人の帰宅時間を時計とにらめっこしながら帰りを待っているママさんはイライラしてくる。マリオもその側で一緒に気をもんでいる。

 特にママさんもマリオも気になるのは娘である。
 昔気質のママさんは、女性がお酒を飲んで夜遅く帰ることなどは考えられない時代に育ったこともあり、娘に対して厳しい。

 ある日、珍しくパパさんが早めに帰ってきた。長男は仕事が忙しくて毎晩残業で遅い。 娘はOLだから、残業なんて滅多にないが、その日は遅く帰ってきた。

 ママさんに「お父さんから、しっかり言って頂戴」と言われていたパパさんは、娘に宣言した。

 「我が家の門限は11時だ」

 なぜ11時か判らないが、パパさんはその日のうちに帰れという意味だった。

 娘は「お父さんだって(門限が)11時じゃないでしょう」と反論したが、今度はママさんに叱られた。

 「あなたはお父さんと同じだと思っているの、冗談じゃないわ」

 娘は分が悪いと感じて即座に謝った。

 部屋に入って「(怒らないのは)マリちゃんだけだねー」と頭を撫でる。

 マリオも心配していたが、娘が帰ってきたことの方が嬉しくて、娘の手を軽く噛んだりペロペロなめてやる。
 門限は1ヶ月ぐらいしか守られなかった。



2008年12月31日水曜日

壮年期

ー就職ー

 長男と娘が同時に就職の時期になった。パパさんは相変らず仕事が忙しくて子供達のことを振り返る余裕がない。就職は子供達がそれぞれ決めるものと考えていた。長男と娘は四つ違いだが、長男が二浪したため短大の娘と卒業が同じ時期になった。


 パパさんは娘も四年制大学に入れたかった。

 娘は「四年間も勉強したら遊ぶ時間がなくなっちゃう」といって推薦入学の短大に入ったのだ。


 長男に相談された。


 長男「お父さん、(就職は)どこが良いかな」


 パパさん「どこが良いんだ、JRか、設計会社か、建設会社か」と聞いた。


 長男「JRは嫌だなー」


 一瞬ぎょっとしたパパさん。「何、あ、そーか、俺を見ていたら嫌になるよなー」


 結局、長男は希望通り大手の建設会社に就職した。


 まだ、バブルのピークを過ぎたばかりの頃で、就職難どこ吹く風の時期でもあり、娘も大手の電気メーカーに就職した。


 パパさんは心の底から万歳をしていた。とりあえず、長男と娘の子育てから解放された気分だった。


 採用研修が終わると、長男も娘も偶然に仙台地区に勤めることになり、相変わらず家から通勤している。


 パパさんは「下宿代を出させろ」とママさんに言っているが、長男も娘も出す気はサラサラないらしい。


 家族の生活は、授業料の支払いが無くなっただけで、以前と変わりなかった。


 マリオも相変わらずマイペースの毎日だった。
          どちらも真面目に働いてね、頼むよ

2008年12月29日月曜日

青年時代

                     山形新幹線“つばさ”

 国鉄時代はお役人の一角だったから、あまり経営ということを意識しなかった。お金も予算というものがあり、消化することが大切だった。

 パパさんは国鉄の地方の係長だった頃、工事予算を十五億円節約して本社の担当部所に叱られたらしい。

 何とも無茶苦茶な話だ。
 「親方、日の丸」の典型な例である。

 民営化されてからは、お客様と収益目標が第一になり、支出は収入に連動して常に修正されるようになった。

 工事費もコストダウンが当たり前になった 国鉄改革の時の予想に反して経営も好調である。毎年千億円ちかい利益をあげている。長期の借金も少しずつではあるが確実に返済している。

 民営鉄道の前途をあまり期待していなかったパパさんも考えが変わってきた。このまま順調に行けば、株の上場も視野に入ってきた パパさんの仕事である建設投資も、キャッシュフロー(手持ちの資金)の範囲で採算性を考慮しながら活発だ。
 プロジェクト管理の責任者であるパパさんは、コストダウンに力を入れている。国鉄時代の予算主義の工事発注や硬直的な積算方式は無視している。

 全てが会社を良くするためである。

 会社は「お客様第一」は当然だが、そこに働く社員の幸福を追及し、それに応えてこそ会社の意味があるとパパさんは考えている。

 パパさんは家長として、家族とマリオのために働いていると考えている。

 えてして、組織が大きいと会社の目的がぼやけてくる。この会社は何のためにあって、何で成り立っているかが薄弱になる。給料も社長から貰っているような錯覚を起こす。

 そもそもはお客様から頂いたお金が、給料の基本なのだ。

 古今東西、お客様を粗末にして栄えた会社はない。地方の小さな商店だろうが、世界的な規模のグローバルカンパニーだろうが理屈は同じである。

 お客様を疎外して、組織内の人間関係、特に上下関係にうつつを抜かしている会社の末路は言うまでもない。

 JRの前身の国鉄は、外部から「国鉄の常識は社会の非常識」と言われた。国鉄一家と言われ、良い意味でもあり、悪い意味でも組織が内部志向だった事を反省し、社会に開かれた良い会社にしたい事がパパさんのささやかな願いのようだ。

2008年12月21日日曜日

青年時代

ー医者嫌いー

 色々嫌いなものがあるが、獣医も嫌いである。獣医が嫌いというより、獣医院の雰囲気が馴染めない。注射もそれ程痛いと思わないし、獣医も大体優しい人が多いから治療そのものは気にならない。

 体調が悪かったり予防接種などで車に乗って獣医院に行くと、いろんな仲間のペットが待合室にいる。診察の時間までここで待たなければならないが、マリオはこの待ち時間が嫌いだ。犬は勿論、同族の猫もいる。人間のように大きい犬もいれば、マリオより小さな犬もいて賑やかだ。

 同族はおとなしく待っているが、犬族は落ち着きがなくかしましい。キャンキャン、ワンワンとうるさくてマリオは身が縮まる思いがする。

 大体、猫族と犬族はあまり仲が良くないのが相場になっている。マリオも家出をした時、一度犬に追いかけられて怖い思いをしたことがあるだけに、6帖くらいの待合室に犬と同席する獣医院が大嫌いなのだ。

 娘は小さな声で「マリちゃんはお利口さんだね」とささやくが、なんのことはない犬族にマークされないようにおとなしくしているだけだ。

 同族にもたまにいるが、往々に犬族は行儀が悪い。大型犬はデンと座って辺りを見回しているが、特に室内タイプの小型犬は行儀が悪い。マリオはしつけができていないペットは飼い主に責任があると思う。甘やかして育てたために、大きくなってから苦労している。

 人間の子育てトラブルと同じようだ。

 診察室に入るとホッとする。獣医の「どうしました」の一言で安心する。人間の医者嫌いの原因である注射とか薬臭いことは気にならない。

 治療を終えて獣医院から出て車に乗ると益々ホッとする。

 車の中ではバスケットから出して貰えるので、窓のそばに行って外の風景を見ながら帰宅することが楽しみなのだ。



2008年12月15日月曜日

青年時代


                        又、眠くなってきたよ

―遊び相手―

子供たちが大きくなり、前のように相手をしてくれなくなった。

猫じゃらしもどこへいったか部屋には見当たらない。たまに娘と次男がひもで遊んでくれるが、チョイの間だけだ。

朝は子供たち三人とパパさんが学校や会社に出かけるまでママさんはてんやわんやだ。

マリオはキッチンの片隅に置かれた食事をマイペースで済ませる。

その後、居間のソファーに陣取って子供たちの出かけるのを見送る。子供たちは夫々、マリオに声を掛けたり頭をなでたりして出かけていく。

ママさんは、朝食の後片付けをして、一息ついてTVを見ている。

マリオも手持ち無沙汰の状態で、運動の欲求に駆られてくる。ママさんはTVに見入ってマリオの気持ちに気づく気配はない。

遊び催促のサインを出すため思案する。まずソファーから床に下りて大きなあくびと共に、思い切り背伸び屈伸運動をする。

ママさんは「マリちゃん、静かになったねー」と声を掛けるが相手をしてくれる気配はない。マリオは「ニヤー」と返事をして猫正座をする。

そのうち、ママさんがキッチンに立つ。歩くママさんの足にからみつく。

「アレ、マリちゃん、危ないよ」と言って、マリオの遊びモードのサインを理解してくれない。

そのあとテーブルに座ってお茶を飲んでいるママさんの周りを歩いたり、正座してママさんを見つめたりするが、マリオの気持ちに気がつかない。

仕方がないから、ソファーの横でバリバリ音を立てて爪とぎをする。

「マリちゃん、(ソファーが)ボロボロになるから止めなさい」とくる。

マリオは半ば諦めてテラス越しに外を眺める。時々、ママさんを見るが、TVに釘付け状態に変化はない。

しばらくしてから、再び背伸び屈伸運動をしてソファーに寝そべって、ママさんの様子を伺っているうちにまどろんでくる。




2008年12月6日土曜日

青年時代

                   パパさん、大丈夫かな?
ー進学問題PART2ー

 長男と娘は大学生で、パパさんは大変である。どちらも私立大だから、授業料が高い。ボーナスは二人の授業料と住宅ローンを合わせると、素通りだとこぼしている。

 ママさんもボーナスはほとんど当てにしていない。

 次男は転向した中学で、レギュラーにならないけれども挫けずに野球を続けていた。高校に入ったら挽回してやろうと考えていた。 志望の高校は(野球が)弱いから、俺がレギュラーエースになって甲子園に行ってやるという野心を持っていた。

 その割に勉強しない。マリオが部屋を訪問するといつもファミコンのコントローラーを持ってチンチン、チンチンやっている。

 マリオとしても娘の前例があるだけに気が気でない。ママさんも気が気でない。

 パパさんは次男は大丈夫だろうとあまり気にしていない。

 それでも私立学校アレルギー(授業料が高い)で「私立だけは勘弁してくれよ」と次男に言っている。

 次男は「ウン、分かった」と素直に答えていた。

 数カ月後、次男はパパさんの期待に応えられず私立大学の付属高校に入った。

 又もやパパさんはガックリきたが「まっ、大学に入る時はエスカレーターだから良いか」と言った。

 マリオはパパさんが気の毒になった。


2008年11月30日日曜日

青年時代

                           身だしなみ

 「お父さんの悪い癖」とママさんが言っているが、パパさんは夜に突然お客さんを連れてくる。

 それも結構酔っているから始末が悪い。その度、ママさんはお酒を出して即席の料理を作る。時にはパパさんのために取っておいた夕飯のおかずの場合もある。

 盛岡時代もちょくちょくあったが、パパさんの単身赴任のため三年間中断していた。

 仙台にきて家族が揃ったら、又ちょくちょくである。

 そのため、ママさんとしてはお酒を切らせない。

 パパさんは月曜から金曜まで、毎日のようにお酒を飲んで来るが、家では一滴も飲まない。

 それでも家には不意のお客様に備えて常にビール、ウィスキー、日本酒、焼酎等のアルコール類がストックされている。

 マリオはパパさんの連れてくるお客様達は警戒しない。それより、酒のおつまみのおこぼれを期待している。猫の健康には良くないが、裂きイカが大好物だからだ。

 それにほとんどのお客さんが焼き鳥くさいのも気にいっている。

 時々、若いグループを連れてくる。JRになってから採用された社員らしい。長男と同い年くらいで、口が悪い。

 その中の一人が、マリオを見て「なんだ、この猫は、豚みたいだな」の暴言?である。

 さすがのママさんもムッときているが、顔にはださない。

 「外に出さないから太り過ぎかしら」と応対する。

 とにかく、週に一度か二度は、予告なしの夜のお客様で(ママさんは)大変である。

2008年11月22日土曜日

青年時代

ー隣の姉妹ー

 今まで空き家だった隣の社宅に引っ越ししてきた。パパさんが国鉄本社に勤めていた時の知り合いらしい。

 夜になって隣人夫妻が恒例の引っ越し挨拶にきた。パパさんとママさんは「よろしくお願いします」と挨拶している。帰ってから、ママさんが「子供が小さいのね」と言っている。

 パパさんは「まだ、若いからな」と答えた。

 二三日経って、玄関で遊んでいる女の子にママさんが話しかけた。

 「お名前は何て言うの」

 「○○」

 「アレ、うちのお姉ちゃん(娘)と同じだね」

 「一人で寂しいね、おばちゃんのおうちにおいで」と言って三才の女の子を家に連れてきた。

 「あっ、おばちゃんのところに猫ちゃんがいるの」

 「お名前はなんていうの?」

 マリオは大の苦手の子供なので、早々に次男の部屋に逃げ込んだ。

 女の子は「横浜のおじいちゃんのうちに猫ちゃんがいるの」と言った。

 ママさんは「あーそー、じゃー、猫ちゃんが好きなのね」と聞いた。女の子は「ウン」と言った。

 それから女の子は「マリオのおばちゃんのところに行ってくる」と言って、毎日のように遊びにきた。
 時々、ママさんは〇才の妹も預かった。

 マリオも最初のうちは警戒していたが、来る回数が頻繁で行動が制限されるのも窮屈なため、恐る恐る近寄って見た。

 それにママさんが居るのでやや安心感もある。女の子は「マリちゃん」と声をかけるがいじめる気配はなかった。

 ママさんが預かった〇才の子は、まだ自由に行動出来ないので居間のソファーに寝せられている。マリオが近寄らない限り問題は起こらないが、マリオは遠くから眺めるだけで、大嫌いな赤ちゃんに近寄る気はサラサラない。

 猫に慣れているためか、マリオには優しい姉妹だった。

 マリオが子供に気を許したのは、長男の孫ちゃんとこの姉妹だけかもしれない。

 後日、会社の運動会で姉妹のママさんが競技に出場するため、パパさんに妹の方の赤ちゃんを預けた。

 久し振りで赤ちゃんを抱いたパパさんは、大事そうに抱いて競技を見ていた。通り掛かった若い社員が「孫ちゃんですか」と言った。

 「ばか言え、娘だよ」と言いながらパパさんは満更でもない表情をしていた。



2008年11月16日日曜日

青年時代



 娘の自動車運転熱は大変なものだ。ほとんど毎日、山の上の学校通学に利用しているためもあって運転技術も相当なレベルになっている。

 休みになると、家にじっとしていられない。特に連休になると遠出をしたくなるらしい。

 「今度の休みに(盛岡の)お祖母ちゃんの家に行かない」とくる。

 マリオはぞっとする。とにかく車に弱い。

 話がまとまって出かけることになる。娘は「マリちゃんも連れて行くからネー」とくる。

 盛岡までは距離が二〇〇キロで、高速道路で約二時間かかる。

 二時間も家族五人と狭い車の中で過ごすのも大変であるが、おまけにマリオは車酔いをする。車に乗るとペット用のバスケットから出されて自由になるが、動く空間がほとんどない。

 それでも家族の膝の上や足の下をくぐって快適な場所を探すが、どこにも見当たらない。狭いところは嫌いではないが、行動を制約されるのが嫌である。高速道路のため、大好きな外の景色も車が一瞬に通り過ぎるだけで面白くない。

 その上、娘はハンドルを握ると人が変わる。まず第一に口が悪くなる。

 ママさんに「あなたは、女の子なんだからネー」と注意されても聞き入れない。それにスピードをどんどん上げる。

 中古のサニーは、一〇〇キロ以上にスピードアップすると警戒音がチンチンと鳴る。

それでも構わず、「よし、前の車を抜いてやる」とばかりアクセルを踏み込む。さすがのパパさんも「おいおい、いい加減にしろ」とたしなめている。

 パーキングエリアで首輪をつけて離されるが、広すぎてかえって不安になる。木の陰に行こうとする。
「マリちゃん、おしっこをしなさい」と言われるが、そんな節操のない躾は受けていない。家族はそれぞれにジュースを飲んだりして、再び出発する。

 ママさんは娘から、長男への運転交替を指示する。

 長男は「しょうがないな」と言いながら、妹と交替して運転する。

 走るとまもなくマリオは車酔いになって「アーオ」と欠伸のような鳴き声をあげて、調子の悪さを訴える。

南部富士(岩手山) とにかく、難行苦行の連続で雄大な南部富士の岩手山が見えてきて「マリちゃん、もう少しだよ」と声を掛けられるまで、忍耐の二時間過ごさなければならない。

2008年11月8日土曜日

青年時代

―外出のマナー―

 週に一回はママさんにブラッシングして貰うが、長毛種のため毎日少しずつだが脱毛する。その毛は空中に浮遊したり、布類に付着する。毎朝掃除機でお掃除をするが、マリオの毛を一掃できるわけではない。

 家族も慣れたもので、家にいる時は全然気にしていない。

 特にママさんの方針で家にいる時、家族全員黒っぽい衣類は厳禁である。

 被害者はパパさんで、ダーク調のポロシャツを好むがマリオの抜け毛対策のため箪笥に入ったきりである。

 お客さんが来た時、ママさんの気の使いようは大変だ。来客が脱いだコート類は決して床に置かない。座布団もテラスで丁寧に叩いてから出す。お帰りの時はガムテープで腰の辺りの毛をとって差し上げるなど至れり尽くせりである。お客さんは恐縮しているが、ママさんは一所懸命だ。

 パパさんは意外と無頓着だが、出勤の時は気を使う。ママさんがガムテープでスーツの前から後ろ、さらにはズボンから毛をとる。朝の時間がない時は手早くしなければならない。長男や次男は全然気にしない。ガムテーピング(家族用語、ガムテープで毛を取る行為)する時間もないから毛がついたままで外出している。

 娘は女の子のせいもあって、着用する前に洋服を徹底的にガムテーピングする。

 お葬式とか結婚式に出かける時は、黒い服なので、家族全員が丁寧にとっている。

 さらにママさんはハンドバッグに小さく切ったガムテープを持って行く。式場に行ってから、万一マリオの毛の取り残しがある家族のための対策に必要なのである。

 とにかく、我が家ではガムテープは必需品になっている。 外出の身だしなみは、ガムテーピングが最低のマナーなのだ。

                     黒いシャツが白くなるぞ

2008年11月1日土曜日

青年時代

                             仲良し?
ー子供達が気になる Part2ー

 長男と娘は大学生になって、一応学校に行っている。
 
 問題は次男である。中学一年の終わりに転校したため、中々友達も出来ないらしい。
 毎日、不機嫌だった。

 盛岡の中学では野球部に入っていたので、仙台の中学でも野球部に入った。

 盛岡では二年生になると、投手の準レギュラーになっていて三年になるとレギュラーは確実だった。

 どこのクラブも同じであるが、チームワークを考えると中途参入はハードルが高くなる。

 転校した中学も案の定、ほとんどのポジション配置は決まっていて、次男のレギュラーへの夢はかなわなかった。

 このことに加えて親しい友達と別れてきたことに、次男の不機嫌の理由があった。

 次男の部屋はいつも閉められていて、マリオが入るには戸をガリガリと爪を立てて合図するしか方法がなかった。それも中々開けてくれない。

 開けても「何だよ」と素気ない。

 マリオは無視して部屋に入る。
 すると戸をバタンと閉めてしまう。

 マリオは次男の足に頭をコツンと押しつけ二三度顔を擦りつけて、ベッドにぽんと上がり、次男を見ている。

 次男はぶつぶつ言いながらファミコンをしている。

 ファミコンのリズミカルなメロディを聞いている内に、マリオはベッドの上でまどろんでくる。

 盛岡時代と何も変わらない関係である。

2008年10月24日金曜日

青年時代

                        今日は忙しくなるぞ!

ー仕事始めー

 正月が終わると、四日からパパさんは会社に出勤する。

 ママさんと娘は朝から大忙しである。朝御飯の後片付けもそこそこに、ママさんと娘は車で買い物に出かける。

 どっさり買い物袋を抱えて帰ってくる。マリオは気になってしようがない。

 「マリちゃんには前に買ってあげたでしょう」と娘が言うが、確認しないと気が治まらない。キッチンの床に広げられてある買い物袋を一つ一つ確かめる。

 ママさんと娘は一日中、キッチンで色々料理を作っている。夕方になるとママさんも気合いが入ってくる。

 「早くしないと来るわよ」

 ありったけのテーブルを並べて、料理をセットして準備完了する。

 一息ついだところに「ピンポーン」とくる。パパさんの会社の第一陣だ。

 口々に「明けましておめでとうございます」と言って上がりこむ。ママさんは一人一人応対している。

マリオは取りあえず、次男の部屋に待避する。皆、知らないおじさん達である。

 ママさんが「(パパさんが)早く帰ってくれないと困るわ」と独り言をしている。

 第二陣、第三陣と来て、その後にちょっぴり酔ったパパさんが「悪い、悪い」と言いながら帰ってきた。ビールの栓が抜かれ、全員で「おめでとうございます」と叫んで、仕事始めのホームパーティが始まる。

 総勢三十人近い人数で、社宅にしては広い十五帖の居間と隣り合った八畳の和室が、足の踏み場もないほどである。靴は玄関からはみ出している。

 マリオも様子を伺っていたが、頃合を見て会場に行く。

 若い社員が「おっ、すごい猫だ」と言っている。

 見知らぬ人間には警戒するが、座の真ん中あたりにパパさんが居るから安心できる。それに料理の匂いが気になってじっとして居られなかった。

 ママさんが「マリちゃん、駄目よ」と言っているが、美味そうな匂いの誘惑には勝てない。

 ママさんは、マリオの毛がお客さん達の洋服に付くのを心配していた。お客さんに「すみませんネー」と謝っている。

 マリオはお客さんの間をすり抜けながら、あちこちで料理を貰って満腹になったところで退場する。パーティは夜の十二時近くまで続いて、お客さんは三々五々に帰って行く。

 パパさんはすっかり酔って、早々に寝てしまう。

それからが大変である。ママさんと娘は後片付けで夜中の三時ぐらいまでかかってしまう。

 パパさんが本社転勤になるまで、毎年正月明けの定例行事だった。

 

2008年10月19日日曜日


ーモンローウォークー

 猫語の代表的なものは「ニャーオ」である。語調によっていろいろな意味がある。「ゴロゴロ」と喉を鳴らすのは、気嫌のよい時か気持ちの良い時だ。

 警戒する時や気分を害した時は「フーッ」と喉から声を出す。

 闘争する時の「シャーッ」は、相手を威嚇するために使う。体を蛇のように丸めた体形でするので、猫は蛇の親戚のように言う学者がいるが、定かではない。

 常に声を出して訴えれば、一緒に住んでいる人間ならば大体の意思は通じるが、マリオに限らず犬に比べて猫類は無口だ。そのために結構態度で示す場合が多い。

 こちらが必要な時は鳴いて訴えるが、いちいちニャーニャー鳴いていられない。

 猫のボディランゲージは犬のように派手さがないために、その意思を汲むためには注意を要する。マリオのボディランゲージの手段としては、長く太い尻尾を有効に使う。

 幼い頃からティールコミュニケーションが得意だったが、家出した時尻尾に負った傷がしばらく完治しないため苦労した。

 仙台に引っ越してから、娘が大学の友達から評判のよい獣医院を聞いてきて2回の通院で治ってしまった。

 尻尾のかたちで気持ちを伝える。伝える必要がなくても自然とかたちになる場合もある。気分の良い時は直径5センチぐらいに尻尾が膨らんで、歩くときは垂直になる。大名行列の先頭を行くぼんぼりみたいなかたちだ。

 普段は床を擦らない程度に尻尾を下げて歩く。これがマリオにとっては一番楽な歩行姿勢なのだ。

 垂直の時は相当尻尾に力を入れないといけない。それでも嬉しさを示すために太く真っ直ぐにして歩く。

 後ろから見ると、モンローウオークのように尻を左右に振りながら歩くらしい。娘はケラケラ笑うが、気にはしない。

 名前を呼ばれた時は尻尾の先を振る。起きていても、うとうと寝ている時も同じ動作をする。うたた寝をしていると、娘は退屈しのぎに名前を呼ぶ。その度に尻尾の先を最小限に振って、聞こえていることを伝えるのだが娘はしつこく呼ぶ。

 猫の生命線は寝ることだということを理解していない。煩わしくなるが「マリちゃん」と呼ばれると尻尾の先っぽが無意識に動いてしまう。


                     尻尾を上げて歩くって難しいんだ

2008年10月11日土曜日

青年時代


ーネバーギブアップー

 仙台にきて2年目の夏。例年にない猛暑になった。毎日真夏日の続く熱暑だった。長毛のマリオには地獄の沙汰である。日光浴は大好きだが、そんな暑さでない。家の中で涼しいところを見つけて歩く。

 取りあえず玄関のコンクリート。やや快適だけれども、家族が出入りしたり、来客があると落ち着かない。次は浴室。ヒャッとしてマァマァ快適だが、湿っぽいのが玉に傷である。

家族も我慢の限界にきていた。特にママさんは「あなた達は外で涼しいところに居るから良いわね」と言っていた。

 強烈なのは娘である。家に帰ると「何、この家は、今ごろクーラーのない家なんてないよ」である。

 ママさんはパパさんに訴えた。

 「あなたは会社で涼しいから良いだろうけど、(クーラーのない)家に居る人は堪らないわよ」

 「何言っているんだ、東京でも我慢したんだから、我慢、我慢、そのうち東北は涼しくなるよ」

 ムッときたママさんは「あんたは良いわよ、お酒を飲んで寝る時しか帰って来ないんだから」と言った。マリオもうなずいた。

 パパさんはこの言葉にはグラッときた。

 猛暑は涼しくなるどころか、8月に入っても治まる気配がない。ママさんとマリオは唯々、耐えていた。

お盆近くのある土曜日、娘の堪忍袋の尾が切れた。

 「お父さん、マリオが死んだらどうするの」とパパさんに迫った。

 パパさんはお盆が過ぎると涼しくなる、もう少しの辛抱だと考えていたが、長毛のマリオを引き合いにされると弱かった。

 「あした買いに行くか」

 家族とマリオはしめしめである。

 ところが、市内の電器屋は在庫ゼロで、ディスカウントショップをはじめ行く店がことごとくクーラーは売り切れだった。それぐらい凄い夏だった。

 パパさんとママさんは諦めかけたが、娘は「ネバーギブアップ」精神を発揮した。

 郊外の大型スーパーでとうとう展示品のエァコンを見つけた。取り付けは手が回らずお盆過ぎになったが、念願のクーラーがついた。

 ママさんは「マリちゃん、涼しくなって良かったねー」とマリオの頭をなでた。

 猛暑は10月半ばまで続いた。


                            涼しいよん!


2008年10月4日土曜日

青年時代

ー留守番ー

 車を買ってから、やたらと外出することが多くなった。

 特にママさんは娘の運転で重宝しているようだ。車を買う時、娘がパパさんに約束したことを、自分への約束にすり替えて「あそこに乗せてって」とか、出先のデパートから「迎えにきて頂戴」とフルに利用していた。

 夏休みを前に、ママさんの実家に行く相談をしていた。娘は「皆で行こう」と提案している。マリオは(勘弁して欲しいナー)と思っている。パパさんが夜遅く帰ってきて娘が聞いた。

 「お父さん、今度の金曜日盛岡に行かない」

 「駄目だよ、仕事があるから」

 「フーン」

 娘は翌日ママさんと相談して、パパさんとマリオを留守番にすることにした。

 かくして、マリオはパパさんと2人(一人と一匹)で留守番することになった。

 留守番の初日、パパさんは朝御飯をそそくさと食べたり、マリオに餌を食べさしたりして出勤していった。残されたマリオは自由に廷内探訪をする。部屋の戸は全てマリオが出入りできるように開けていった。家中好き勝手に歩き回り、寝たい時に寝て自由気ままな一日を過ごしていたのである。

 夕方になって腹が空いても、朝にたっぷり入れた餌が半分以上残っていて、別に不都合はなかった。さすが夜になると、いつもなら家族が居るのに誰も居ないというのは寂しくて仕方がない。

 頼りのパパさんも帰ってくる気配はない。

 12時近くに、玄関の鍵がガチャッと音がした。マリオは寝ていたが玄関に出てみると酔っ払ったパパさんがふらつきながら靴を脱いでいた。マリオは(遅いぞ、何していたんだ)という態度で寝ていたところに踵を返した。

 パパさんは「おい、マリオ」と呼んだ、ふり向きもしない。

 「そうか、寝るか」といって歯を磨いてパジャマの着替えもそこそこに蒲団に潜りこんだ。

 翌日の朝も前日同様、パパさんはバタバタと出て行った。マリオの食器には山盛りに餌が盛り上がっている。

 その日はどういう訳か、訪問者が多くてひっきりなしにチャイムが鳴った。のんびり寝る暇がないくらい多かった。

 ひとりで留守番のマリオは心細くなった。夕方にはママさん達も帰るだろうと心待ちにした。夕方になっても誰も帰ってこない。

 さすが夜には訪問者はなくなったが、ひとりぽっちのマリオには寂しさがつのる。

 頼りのパパさんは相変わらず帰って来る気配がない。食欲も湧かない。

 深夜12時をちょっと回った時刻に、玄関の鍵がカチャカチャなった。

(あっ、パパさんだ)マリオは嬉しくなって玄関に飛んでいった。

 ふらふらとしたパパさんが入ってきた。

 酔眼朦朧としたパパさんに「おっ、マリオ」と声をかけられた。

 「ニャーお」と返事をしたマリオは、本当に嬉しくて、嬉しくて、家中を全速力で走り回りながらお腹が空いていることを思い出していた。

 


                             遅いよ

2008年9月28日日曜日

青年時代

ー運転免許と車ー

 大学生になったばかりの娘が自動車学校に行きたくて、ママさんに催促している。

 「お兄ちゃんの時は、高校を終わって直ぐに(運転免許を)取らしたのに」

 ママさん「そんなこと言ったって、お父さんに言いなさい」

 「(免許と車が)あれば便利よ、買い物も楽だし、マリオの病院だってタクシーを使わなくて良いし、(盛岡の)お祖母ちゃんのとこだって車で行けるし」

 パパさんは夏のボーナスが出たら、自動車学校に通わせる積もりでいたが、そんなことはお構いなしの要求である。

 娘は大学の友達のパパさんが自動車の販売会社にいて、頼むと(中古の)車を安く買える話を聞いて、夏までには運転免許を取りたかった。

 パパさんにすれば、娘の私立大学の入学金を払った直後で、とんでもない話しだった。

 しかし、娘はくじけなかった。

 「お父さん、分割で良いから、学校に通っていい?」

 パパさん「しようがないな、幾らかかるんだ」

 とうとう、自動車学校に通い始めた。

大学の合間にせっせと通い、2か月も掛からないで運転免許を取ってしまった。

 免許を取ると、次はマイカーである。娘は山の上にある大学は通学に不便なことをパパさんに訴え始めた。

マリオはパパさんに同情しながら聞いていた。

 パパさんは財布が休む暇がないとこぼしている。

 娘は「お父さん、中古だけど安くて良い車があるから」と迫っている。

 「見るだけで良いから」と日曜日にママさんも一緒に連れ出して、販売店に出かけた。

 パパさんは娘の友達のパパさんと話をしている内に、何となく買う気になっていた。

 真っ白いサニーが社宅前の駐車場に鎮座した。

 娘は意気揚々と自動車通学を開始した。

 長男は「お父さんは、○子に弱いんだから」とひがんでいたが、共有感覚でちゃっかり乗り回していた。

 マリオも時々乗せて貰った。

 幼い頃に乗ってないので乗り心地は良くなかったが、窓越しに見える街の風景が珍しくて、車の窓にへばりついて乗っていた

                  家にいるほうが良いんだけどな

2008年9月23日火曜日

青年時代

ー全国大会ー

 日本に学会と名のつく団体が幾つあるか判らないが、パパさんも幾つかの学会に所属している。その中で最大規模のものは日本建築学会である。会員数は3万数千人で日本でもトップクラスのメジャー学会でもある。

 パパさんはJRになった年から、仙台にある建築学会支部の役員になった。忙しい仕事の合間を縫って、月に1回の常議員会、担当部会の事業執行やら結構大変だった。

 学会活動は学者先生の実績づくりみたいなところで、パパさんがせっせと真面目にしなくても良かった。しかし、パパさんはせっせとやった。これには訳があって、役員会の最初の顔合わせを兼ねた新年会で、同じ役員の大学教授に(国鉄出身の役員は)「国鉄時代は名前ばかりでほとんど出席してくれませんでした」と言われた。

 これにはパパさんも恐縮するやら、役員だった国鉄の先輩を恨むやらで、汚名返上の決心をしたのである。

 支部役員は好評のうちに2年の任期満了をむかえた。

 翌年に学会の全国大会が仙台で開催されることに決定していたため、支部長先生から全国大会お手伝いの要請がかかった。パパさんは無役で手伝うのは立場が弱いという理由で学会本部の役員に立候補して当選した。そして全国大会実行委員会の事業部会を手伝うことになった。

 JRは発足と同時に旅行業の登録をしており、学会の全国大会は絶好のビジネスチャンスであった。パパさんは新設された旅行業の担当部所を督励して、社業と学会活動の二足の草鞋をはいた。

全国から数千人が集まるため、切符の手配、ホテルの予約とてんやわんやだった。ホテルは市内でまかないきれず、近傍の温泉・観光地の宿を手配したが、それでも足りず隣県のホテルまではみ出した。

 全国大会の初日、恒例のレセプションパーティが開催される。それの実行責任者にパパさんがなった。

パパさんは自分が建設したJRのホテルを会場に選定して、パーティの骨格を作った。参考にしたのが、前年広島で開催された大会だった。

 広島では、会場の大学食堂でパーティがあり、あまり華やかな印象は受けなかった。参加者も300人程度だった。

 パーティの企画で一番大切なことは、出席者数の予測だ。前年の例から、会場の立地条件を考慮して500人の出席を見込んだ。立食パーティという条件を加味して、ホテルには参加予定者数の0.7掛けで料理を頼んだ。

 ここまでは非常に堅実なパーティプランだったが、当日ハプニングが生じた。

 会場が駅に隣接して都心という好条件を反映して、パーティ参加者は予想を遥かに上回って、700人強になったのである。受付の指揮を取っていたパパさんもびっくりした。準備した料理の2倍以上の参加者だ。懸命に受付をさばきながら宴会場をのぞくと、熱気むんむんの状態だった。

 会費の整理を終えたパパさんが、パーティに参加した時、料理はほとんど無くなっていた。パーティは2時間で終わり、参加者達は談笑しながら三々五々に街へ散った。

 会場に残された無数の食器はことごとくきれいになっていた。ホテルのパーティというと料理の半分以上が残っていつもは勿体ない思いをしていたパパさんだが、(料理が足りなかったのではと)ちょっぴり罪悪感にとらわれた。

 全国大会は3日間のスケジュールを全てこなして、無事終了した。週末、くたびれたパパさんはマリオと一緒に1日中寝転んでいた。

                        パパちゃん、疲れたね


 大会後の役員慰労を兼ねた会合で、パパさんは実行委員長にパーティの不手際を謝った。

 委員長先生からは「いえいえ、(料理が無駄にならなくて)最近にない気持ちの良いパーティでした」と逆に感謝されたそうだ。

 

2008年9月21日日曜日

ペット愛好家の皆さんに緊急警告!

中国産ペットフード

中国の食に対する危機感は餃子問題に始まり、現在、同国内のミルク問題で世界各国の信用を失墜させています。今度は人間ではなく、ペットにもその広がりを見せています。言うまでもなく、ペットは自分に与えられるフードが何国産か判りませんから無防備です。飼い主が注意するしかありません。

中国産ペットフード米で犬猫急死(読売新聞2008.09.21)
メラミンを巡っては、米国で昨年3月、中国産の小麦グルテンを使ったペットフードを食べた十数匹の犬や猫が急死し、米食品医薬品局(FDA)はグルテンや死んだ猫からメラミンを検出したと発表。

ペットフードを製造したカナダのメーカーが6000万食を回収する騒ぎに発展した。中国の製造会社は、グルテンのたんぱく質を多く見せるためメラミンをぜたという。

FDAは、グルテンなど中国産植物性たんぱく質について輸入時に検査を行い、安全が確認できない場合は輸入を禁止した。

ただ、日本ではペットフ-ドの安全確保についての法規制はなく、昨年6月、問題が発覚した米国でリコール対象となったペットフードが販売されていた例が確認されていた。