ー仕事始めー
正月が終わると、四日からパパさんは会社に出勤する。
ママさんと娘は朝から大忙しである。朝御飯の後片付けもそこそこに、ママさんと娘は車で買い物に出かける。
どっさり買い物袋を抱えて帰ってくる。マリオは気になってしようがない。
「マリちゃんには前に買ってあげたでしょう」と娘が言うが、確認しないと気が治まらない。キッチンの床に広げられてある買い物袋を一つ一つ確かめる。
ママさんと娘は一日中、キッチンで色々料理を作っている。夕方になるとママさんも気合いが入ってくる。
「早くしないと来るわよ」
ありったけのテーブルを並べて、料理をセットして準備完了する。
一息ついだところに「ピンポーン」とくる。パパさんの会社の第一陣だ。
口々に「明けましておめでとうございます」と言って上がりこむ。ママさんは一人一人応対している。
マリオは取りあえず、次男の部屋に待避する。皆、知らないおじさん達である。
ママさんが「(パパさんが)早く帰ってくれないと困るわ」と独り言をしている。
第二陣、第三陣と来て、その後にちょっぴり酔ったパパさんが「悪い、悪い」と言いながら帰ってきた。ビールの栓が抜かれ、全員で「おめでとうございます」と叫んで、仕事始めのホームパーティが始まる。
総勢三十人近い人数で、社宅にしては広い十五帖の居間と隣り合った八畳の和室が、足の踏み場もないほどである。靴は玄関からはみ出している。
マリオも様子を伺っていたが、頃合を見て会場に行く。
若い社員が「おっ、すごい猫だ」と言っている。
見知らぬ人間には警戒するが、座の真ん中あたりにパパさんが居るから安心できる。それに料理の匂いが気になってじっとして居られなかった。
ママさんが「マリちゃん、駄目よ」と言っているが、美味そうな匂いの誘惑には勝てない。
ママさんは、マリオの毛がお客さん達の洋服に付くのを心配していた。お客さんに「すみませんネー」と謝っている。
マリオはお客さんの間をすり抜けながら、あちこちで料理を貰って満腹になったところで退場する。パーティは夜の十二時近くまで続いて、お客さんは三々五々に帰って行く。
パパさんはすっかり酔って、早々に寝てしまう。
それからが大変である。ママさんと娘は後片付けで夜中の三時ぐらいまでかかってしまう。
パパさんが本社転勤になるまで、毎年正月明けの定例行事だった。
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