ー本社転勤ー
パパさんが本社に転勤になるらしい。仙台には六年いてトップである上司も三人目だったから潮時だったかもしれない。
ちょうど、次男が高校三年で大学受験を控えていたこともあり、引っ越しは面倒だから単身赴任だとパパさんは言った。
「最后のお勤めだな」と言って本社に転勤した。
バブルがはじけつつある時期で、当時のJR本社にはバブル時代に策定された案件がどっさりあったらしい。その中に国鉄改革の総仕上げのシンボル的なプロジェクトとして本社ビルの移転計画があった。
そのプロジェクトはJR発足直後から計画が継続されていて、パパさんが乗り込んだ時期は方向づけが出来ていた。残された問題は1,000億円近い高額な建設費だった。
パパさんはそのプロジェクトの全容に一通り目を通して心の中で叫んだ。
「何じゃー、これは!」
建設費もさることながら、赤字のどん底から立ち上がった民営会社の(いくら業績がよいとは言え)本社ビルとしてはレベルの高い設計だった。パパさんはこのままプロジェクトを進めると、建設技術陣に再び汚点が残るような予感がして気を引き締めた。
パパさんは二、三ケ月、家に帰る毎に疲れた感じだった。転勤する時、前の勤務箇所のトップに「あそこは激職だよ」と言われていた。
パパさんは常々「仕事はゲームだ」だと割り切っていたが、その時だけは往生したらしい。
投資財務の担当部署と相談したり、設計を見直したり大変だったらしいが、当初の総事業費を半減した。会社の常務会で大筋の了解が出て、やれやれとなった。
次々とプロジェクトのコストダウンをして、計画案件を進めた。
本社に転勤したパパさんの口癖。
「何のことはない、バブルの後始末担当だよ」
猫族は自分以外の猫がしたことを引き継ぐという行為はしない。たまに優しい雌猫が捨てられた子猫を育てることもあるが、これも滅多にあることではない。基本的に自立実行が猫の生活信念である。
飼い猫稼業をしていると、どうしても飼い主に手をかけてもらうことが多くなるが、マリオも自立志向が信条でありプライドである。
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