ーライバル登場ー
札幌から神戸に転勤していた長男が仙台に転勤してきた。
仙台の家から札幌に転勤した時は独身であったが、今度は嫁さんと神戸で生まれたジュニアと三人で戻ってきた。
パパさん、ママさんにとっては初孫である。
パパさん五十五才、ママさん五十四才である。おじいちゃん、おばあちゃんと呼ぶには若干抵抗のある年齢である。
それでも二人はニコニコしている。目に入れても痛くないとはこのことだろう。
家庭の主役だったマリオにとってはライバル登場で、マリオのステイタスの危機でもある。
年をとっても、我が家のアイドルを自認しているマリオは家族の愛情を横取りされるような危機感を感じていた。その上何よりも嫌いな赤ちゃんである。
益々、憂鬱になる。
ジュニアはよちよち歩きであるが、まだはいはいが楽らしくて歩くことは少ない。
幸いなことに、長男は会社の社宅に住むので嫁さんがジュニア同伴で訪問した時だけのストレスになる。
それにしても、家に来ると大変である。
ママさんはジュニアを抱っこして「ほら、マリちゃんだよ」とくる。逃げ出したいのをじっと我慢している。
そのうちジュニアも慣れてきて、「ニャーニャ、ニャーニャ」と近寄ってくる。
マリオには恐怖の連続である。
救いは娘がいる時だけである。
「ねー、マリちゃん、ジュニアなんて」とマリオをかばってくれるが、気持ちは少しずつジュニアに傾いている。
ジュニア用語。ジィジィ=パパさん、バァバァ=ママさん、ネェネェ=娘、ニィニィ=次男、ニャーニャ=マリオである。
マリオには何のことか判らない。
ジュニアは来る度に大きくなっている感じで言葉もしっかりしてくる。マリオの呼び方も「ニャーニャ」から「マリちゃん」に変わった。
マリオは時々ジュニアにジェラシーを感じる時もあったが、餌を運んでくれたり、優しい一面のあるジュニアが少しずつ憎めなくなっていった。
それに同性という親しみもあったかもしれない。
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