ー受験勉強ー
日中と夜寝るまでの時間はほとんど娘の部屋で過した。娘は中学三年の新学期に転校したため、学校の友達やカリキュラムの違いもあって高校の受験勉強には悪戦を強いられていた。ママさんは、そんな状態であるためペット(犬でも猫でも)飼育は反対だった。
そこにマリオ登場である。
学校でトラブルがあった時や東京の友達など思い出す時は、マリオが娘の慰め役だったが、それ以上に娘は念願のペット実現で(マリオに)夢中になっていた。勉強も手につかず、マリオにつききっきりである。
マリオがベッドに寝ていると、一緒に横になってあどけないマリオの寝顔を見続けていた。そしてそのまま一緒に寝込むことも度々あった。
東京の中学時代はマァマァの成績で心配なかったらしいが、盛岡の受験事情は東京と異なるため、早い機会にペースを取り戻して欲しい、というのがママさんの切実な願いだった。
パパさんに週末になると、ママさんから苦情が呈される。
「お父さん、(娘が)マリオにべったりで勉強してないのよ、何とか言って頂戴!」
「………」無言のパパさん。
学期末の進学相談の結果はかんばしくなかった。担任教員に志望校が難しいと言われた。 又々、ママさんの心配がつのる。
「お父さん、どうにかしなくちゃ」
「よし、判った」と言ったパパさんの打った手は、家庭教師の手配だった。女子大生のアルバイトがやってきた。週に二回の受験勉強の指導時間は立ち入り禁止である。
マリオは性格的に、家族以外はあまり親しみを持てなかったので、知らないお姉さんが来ている娘の部屋は敬遠した。
その時は居間にいくか、長男の部屋で訳の判らない賑やかな音楽を聞くか、次男のところに行ってファミコンの伴奏を聞きながら寝そべっていることにした。
パパさんも、中学の中途半端な時期に転校させた娘が心配で、週末になると勉強を応援した。時間を決めた模擬試験みたいな勉強だった。その時はマリオも娘の部屋を覗くことがあった。そろそろと入ってベッドに上がって見ていると、「マリちゃん、難しいよ、教えて」と言われる。返答に困ってしまう。
色々いきさつがあって第一志望は無理だったが、市内の女子高校に入学した。パパさんも、四月から転任予定の仙台の高校を打診したらしいが、娘の希望で盛岡に落ち着くことになった。
娘は高校生になってからは元気を取り戻して、通学している。
マリオのせいではないのだが、第一志望を逃したのが残念だったらしいパパさんは、
「マッ、大学の時頑張れば良いか」と納得していた。
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