―職探し―
パパさんの髪は薄い。子供たちは当たり前だと思っている。マリオも気にならない。ママさんだけが気がかりなようだ。
「お父さん、最近(頭が)薄くなってきたわよ」と注意している。
毎晩帰りが遅く、出張も頻繁にある。
いよいよ、国鉄の民営化作業が胸突き八丁になってきたらしい。
パパさんが一番胸を痛めていることは部下たちの雇用問題だ。国鉄に生涯の夢を託して就職した部下たちの人生を変えるという苦渋の作業がパパさんの頭を悩ましている。
パパさんは東北一円の会社リストをもとに、職員受入れのお願い行脚に週の半分は出かける。
仕事でお付き合いのある自治体のトップにもお願いする。
数え切れない訪問先での応対は色々らしい。国鉄解体に対する同情論にはじまり、逆に厳しい国鉄批判など、全て頭を低くしてひたすら余剰人員と称される国鉄職員の雇用をお願いして歩く。
中には国鉄と聞いただけで、門前払いを受けることもしばしばあった。
それでもパパさんは部下たちに対する思いで一生懸命だった。
正に髪を振り乱してという表現が当たるが、頭を悩まして振り乱すもの(髪)が薄くなったのかも知れないとマリオは同情していた。
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