自由に外出はできないが、家の中はどこへでも行けた。特に屋外は屋上から二階と中二階のベランダは自由に行ききできた。夏になると、一階の部屋以外は開放的になる。
外部の空気を吸うには二階のベランダが良い。道ゆく変化も自由に観察できる。
屋上も広くて快適だが、コンクリートの立上がりがあるため、マリオには空しか見えない。たまに、パパさんの後について行って走り回ったり、ゴロゴロ転げ回ったりするが、やっぱり往来が見られないのは退屈だ。それにラセン状の階段がマリオには気に入らない。。
家族はマリオが二階のベランダからは降りられないと安心している。そのせいか二階のテラス戸は常に開放されている。一階の出入り口から自由に出られないマリオは土が恋しくて、何度かダイビングを試みるが自信がなかった。
特に二階のベランダは視覚的に無理とあきらめていた。
中二階のベランダは長男の部屋(元はパパさんの書斎)の南面に張り出していて道路を二方向に見渡せる構造になっていて、マリオの大好きな場所だった。
そこは二階のベランダとは階段でつながっていて、一メーター低く地上に近いことが魅力的で、独力で地面に降りられる可能性があった。マリオはベランダの手摺の間から首を出して、地上との目測をしていた。
娘は「マリちゃん、あそこに行くと危ないよ」と手摺の隙間から落ちる事を心配して注意した。
マリオはそれとは逆に、自力でできる地上散歩の可能性を追及していたのである。
ある日曜日、朝の御飯をたっぷり食べて、昼過ぎまでぐっすり睡眠を取り、起き掛けに充分な屈伸運動をした後、外部の空気を吸いに二階のベランダに出た。
何のきなしに手摺の格子越しから道を見ていると、三毛の同族が横切るのが見えた。その行方を追いかけながら中二階のベランダに行った。影も形もなかった。
手摺の隙間から首を出して、姿を求めているうちに庭の土が目に入った。
(よし、降りよう)手摺の外に出て体制を整えフワッと降りた。
着地してから、突然の変化を確かめるように何秒か静止して(なんだ、簡単じゃないか)と思い歩きだした。
悪気もなく縄張りである庭の散策を始めた。「アレッ、マリオが…」と居間で娘がびっくりしている。
「どこから出たの」と言って、庭に出てきて抱きすくめられた。
一階中の出入り口が確かめられた。
開いているところはなく、娘はマジックにかかったようだった。
それから一階の出入り口の監視が厳しくなった。
後日、二度目のダイビングがばれて、中二階のベランダにネットが張られ、自由外出はできなくなった。
庭を自由散歩
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